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首の付け根、鎖骨の真上のラインに、黒いベルベットの幅広テープが一周している。胸元の白い肌と、首の仏の動きと、その間を斜めに走る一本の暗い線。装飾品としては控えめなのに、その一本の線だけで、首から下の身体全体の印象を変えてしまう力を持つ。チョーカー(英: choker)とは、首に密着して巻く幅 1〜3 cm 程度の短い首飾り、およびそれを身につけた姿を性的興奮の対象とする嗜好の総称である。一般的な装飾品としての用法と、SM 文化における首輪の図像との中間領域に位置し、ゴシック・ロリィタ系、ヴィジュアル系、現代ストリートファッションを横断する装身具フェチの代表的形態として確立している。

語源と定義

英語 choker は動詞 choke(息を詰まらせる、締め付ける)から派生した語で、文字どおり「首を絞めるもの」の意。一般的な装飾品文脈では、首に密着するように設計された短い首飾り全般を指す。

定義としてのチョーカーは、長さが首周(平均 32〜38 cm)に等しいか、それより 1〜2 cm 長い程度の短い首飾りで、首に密着して鎖骨の上に位置する。素材はベルベットテープ、革、リボン、金属チェーン、レース、ビーズ等、多様な選択肢がある。これに対し、首から胸元へと長く垂れる首飾りは「ネックレス」と呼ばれ、別カテゴリに分類される。

歴史

首に密着する装飾品の歴史は古代にさかのぼり、近代的な意味での「チョーカー」の流行は 18 世紀末から 19 世紀のヨーロッパに位置づけられる。フランス革命直後、断頭台で処刑された貴族を悼む象徴として、若い女性が首に細い赤いリボンを巻く慣行が生じた。「断頭台のリボン」(la ribbon à la victime)と呼ばれるこの装いは、革命期の追悼装飾から、19 世紀後半の装身具の一種として残存した。

19 世紀後半のヴィクトリア朝期には、英王室周辺・上流階級の女性のあいだでベルベットや真珠のチョーカーが流行した。とりわけ、首に傷跡を持っていた英王女アレクサンドラ(後のアレクサンドラ王妃)が、その傷を隠すために幅広のチョーカーを愛用したことが、チョーカーをファッションアイコンとして広めた契機の一つとされる。

20 世紀初頭のアール・デコ期、1970 年代のグラム・ロック、1980 年代のニューロマンティック、1990 年代のグランジ・ゴス系ファッションのなかで再生され続け、2010 年代後半以降にはストリートファッションのなかで再々流行を見せている。日本では 1990 年代以降、ヴィジュアル系バンド・ゴシックロリィタ・ヴィジュアル系コスプレの装具として強く定着し、サブカルチャー文化のなかで独自の発展を遂げた。

嗜好の構造

首という部位の特殊性がまず核となる。首は身体のなかでも防御の手薄な部位であり、頸動脈・気管・声帯を内包する。この生命的脆弱性を持つ部位を装飾するという行為自体が、装着者の信頼・無防備さの提示として機能する。チョーカーが首に「巻かれている」状態は、装着者が他者からの視覚的接近を許容している、という記号として読まれうる。

装飾品と拘束具の中間領域性も訴求の核心となる。同じ「首に巻かれた帯」でも、装飾的なベルベットチョーカーと SM 文化における首輪緊縛の首縄は、形状的には連続している。両者の境界は素材・幅・装飾の有無・社会的文脈によって決まる流動的なものであり、チョーカーフェチの嗜好にはしばしばこの「装飾品の顔をした拘束具」としての両義性が含まれる。

視線誘導の効果も独自に働く。首に走る一本の水平線が、見る者の視線を首から胸元、そしてその下へと自然に下降させる視覚的フレームを形成する。鎖骨の凹凸・首筋の線・喉仏の動き・うなじの輪郭が、チョーカーを起点として強調される。

最後に、首絞めの想起がある。choker の原義どおり、首に密着する装具は首を絞める行為を遠回しに想起させる。実際の首絞めとは異なる装飾的形態をとっていながら、その図像的近接性が独自の嗜好的重量を担う。

派生形態

  • ベルベットチョーカー:標準形態、幅 1〜2 cm の黒ベルベット
  • 革チョーカー:幅広・厚手・SM 系装具との連続領域
  • レースチョーカー:ロマンティック系・ゴシック系
  • リボンチョーカー:可憐系・少女趣味系
  • チェーンチョーカー:金属チェーン、パンク系
  • リング付きチョーカー(O-ring choker):中央に金属環、SM 系記号
  • タトゥーチョーカー:伸縮性編組ゴム、1990 年代米国系
  • パールチョーカー:真珠の連、上品・貴族趣味系
  • 鈴付きチョーカー:猫娘系・ペット系
  • 銘版付きチョーカー:刻印プレート、所有関係の記号

文化的言及

成人向け作品において、チョーカーは「ゴシックロリィタ」「メンヘラ」「病み系」「黒ギャル」等の人格類型の視覚記号として運用される。とりわけ、リング付きチョーカーや黒革製の幅広チョーカーは、SM 文化との接続を示唆する記号として、調教ペットプレイ・支配関係物語の標準的装具として位置づけられる。

二次元表現においては、チョーカーはキャラクターの個性を示す装飾品として、特定属性(クール系・ゴス系・サブカル系・退廃系・病み系)のキャラクターに頻繁に付与される。アニメ・ゲームキャラクターの「シグネチャーアイテム」として、髪型・眼鏡と並ぶ識別記号の一つを構成する。

コスプレ・ヴィジュアル系・ゴシック・ロリィタの各サブカルチャーにおいては、チョーカーは衣装体系の中核装具として運用され、衣装全体のテーマ(吸血鬼・人形・修道女・退廃貴族等)に応じて多様な意匠が選択される。これらサブカルチャー圏での発達が、現代日本のチョーカーフェチの基層を形成している。

関連項目

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参考文献

  1. Clare Phillips 『Jewelry: From Antiquity to the Present』 Thames & Hudson (1996) — 西洋装身具史
  2. Valerie Steele and Jennifer Park 『Gothic: Dark Glamour』 Yale University Press (2008)
  3. 『ファッション辞典』 文化出版局 (1999)
  4. 『ジャンル別 AV 大全』 コアマガジン (2014)

別名

  • choker
  • チョーカー
  • 首飾り
  • neck chain
  • collar fetish
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