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スーツ姿の事務員、健康診断、社内行事。AV にしては妙に生活臭のする舞台設定。「これは雇われた女優ではなく、本当にこの会社で働く社員だ」という建前が、見る者にいつもと違う現実味を差し出す。

社員モノ(しゃいんもの)とは、AVメーカーの社員自身が出演するという体裁をとる企画 AV の系譜を指す総称である。プロの女優ではなく、メーカーで働く一般職員が撮影に参加するという設定を打ち出すことで、強い素人性を演出する手法を特徴とする。

概要

社員モノの核は、「演じる職業の女優ではなく、実在する会社の従業員が出ている」という枠組みにある。職場の健康診断、社内旅行、新人研修、上司との関係といった会社という日常空間を舞台に採ることで、視聴者は「現実に存在する組織の内側を覗いている」という疑似ドキュメンタリー的な感覚を得る。

この設定がもたらすのは、親近感と背徳感の両立である。プロの完成された演技ではなく、素人的なぎこちなさや羞恥が前面に出ることで生々しさが立ち上がり、同時に「仕事として撮られている職員」という構図が日常を侵犯する背徳感を生む。単体・企画区分でいえば、看板女優を主役に据える単体作品とは対照的に、企画モノの一系譜として位置づけられる。

なお、出演者の実態は作品やレーベルによって幅がある。実際に社員として勤務しながら出演する事例もあれば、企画上の設定として女優が職員役を演じる事例もあり、両者の境界は流動的である。本項は個別作品の出演実態を断定しない。

代表的系譜

社員モノを大衆的に知られる企画として定着させたのが、ソフト・オン・デマンド(SOD)の「SOD女子社員」シリーズである。同シリーズは 2003 年に始まり、自社の女性社員が出演するという体裁を前面に押し出した企画として展開された。健康診断や社内イベントを題材にしたユーモラスな演出を交え、2000 年代半ばに同社の代表的な看板企画の一つへと成長した。

この成功以降、「メーカー社員が出る」という枠組みは一つの定型となり、他社の企画にも波及した。職場というありふれた舞台を性的状況へ転化させる発想は、企画 AV のバリエーションを広げる契機となった。

受容の構造

社員モノが支持される背景には、素人性への嗜好がある。プロの女優に対する「作られたもの」という感覚を回避し、より身近で現実に存在しそうな相手を求める志向が、職員という設定によって満たされる。「同じ会社にいそうな普通の女性」という親近感は、視聴者の自己投影や疑似的な距離の近さを生む。

加えて、職場という公的空間と性的状況の落差が背徳感を高める。本来は労働の場である会社が性の舞台に変わるという転倒が、日常の裏面を覗くような興趣をもたらす。これは制服モノや素人モノと通底する、日常的状況の侵犯という快楽の構造である。

演出の特徴

社員モノは、その建前を支えるために特有の演出様式を発達させた。撮影スタッフとの会話、企画の説明、出演者の緊張や戸惑いといった「撮影の現場そのもの」を画面に取り込むことで、作られた物語ではなく実際に進行している出来事だという感覚を強める。プロの女優作品が完成された虚構を提示するのに対し、社員モノは制作過程の生々しさを意図的に見せる。

ユーモアやドキュメンタリー的な語りを交えることも多い。健康診断や社内イベントといった日常の枠組みを借りながら、そこに性的状況を滑り込ませる構成は、視聴者の警戒を解きほぐしつつ背徳感を高める。こうした手法は、企画 AV というジャンル全体が「いかにして現実味を演出するか」という課題に取り組んだ成果の一つでもある。

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参考文献

  1. 藤木 TDC 『アダルトビデオ革命史』 幻冬舎新書 (2009)
  2. 中村淳彦 『AV 産業―一兆円市場のメカニズム』 角川書店 (2012)
  3. 本橋信宏 『全裸監督―村西とおる伝』 太田出版 (2012)

別名

  • 社員モノ
  • メーカー社員企画
  • 女子社員モノ
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