会議室のような無機質な部屋に、白いテーブルとパイプ椅子が一脚ずつ。座り方、視線の落とし方、言葉の選び方、緊張で手元が震える瞬間まで、画面の被写体はすべてカメラに記録されている。これからの撮影に進むかどうかを、形式上は本人の口から答えさせる。
面接もの(めんせつもの)は、AV 出演希望者の事前面接、撮影前のヒアリングを再演するアダルトビデオのシチュエーションジャンルである。本項では新人デビュー作との関係、AV 新法以降の制度変化、ジャンルの作劇構造、観客側の受容心理を扱う。
概要
面接ものは、(1) 出演希望者と面接担当者の二者(あるいは複数者)が、(2) 椅子・テーブル等を挟んで対面し、(3) 出演条件・身体的特徴・経歴・脱衣テスト等の確認を行う、という基本構図を持つジャンルである。実際の AV 業界の出演契約プロセスを「ドラマ的に再演する」形式と、「実際の面接の様子を撮影に組み込む」形式の両方がある。
ジャンルの最大の特徴は、(1) 「これから本撮影に入るかどうかが決まらないままの段階」を画面に残す不確定性、(2) 撮影現場の制度的儀式を観客に開示する自己言及性、(3) 出演希望者の「素」の表情・言葉を捉えようとするドキュメンタリー的志向、の三つにある。
ジャンルの構成
形式面接
形式面接型の面接ものは、AV 出演契約に関わる手続きを画面で見せる構成である。撮影スタジオの応接室、会議室、撮影現場の控え室といった舞台で、面接担当者(プロデューサー・ディレクター・スタッフ)が出演希望者に対し、氏名・年齢・経歴・出演動機・希望する作品ジャンル・避けたい行為等を聞き取る。
聴取項目は実際の業界の出演契約書類とほぼ同じ項目に基づくが、撮影用にドラマ的な脚色が加えられる。「なぜ AV に出ようと思ったのか」「家族には言っているのか」「彼氏はどう思うか」といった私的な質問が含まれ、出演者の回答が画面の主たる素材となる。
脱衣テスト・撮影テスト
形式面接の延長として、脱衣テスト・撮影テストの段階が画面に組み込まれる作品が多い。「衣装を脱いでみてください」「カメラの前で動いてみてください」「軽く触れさせてもらってもいいですか」といった段階的な指示で、出演者の反応・適性を確認する設定が用いられる。
このシーンは、面接ものの中で観客側の主たる視覚的快楽源となる部分である。撮影前の不慣れさ・緊張・困惑が、脱衣の段階的進行と並行して描かれることで、新人特有の身体性が画面に残される。
本撮影への接続
面接ものの最終段階は、面接の延長で実際の撮影行為へ接続するシーンが組まれることが多い。「採用が決まったので、いまから本撮影に進みます」「テストの一環として」といった形で、形式的な区切りを設けずに行為に進む構成が、ジャンル内の標準パターンとなっている。
新人デビュー作との関係
接続的なジャンル
AV デビュー作と面接ものは、構造的に密接に重なる。多くのデビュー作は冒頭部分に面接シーンを配置し、出演者の素の自己紹介・経歴説明を画面の冒頭に置く。観客はデビュー作を「初めて」の記録として消費するため、そこに至る面接プロセスがセットで提示される効果が高い。
専門の「デビュー作レーベル」「面接ものレーベル」は、面接シーンを含む作品を主力商品として展開する。SOD STAR・Marx Brothers・kawaii*等のレーベルは、新人発掘・面接・デビューの一連の流れをパッケージ化した作品を継続的にリリースしている。
キャスト発掘との関係
面接ものは、業界の「AV スカウト」「キャスト発掘」のプロセスをドラマ的に可視化する側面も持つ。「街でナンパされた素人」「モデル事務所からの紹介」「ネット応募」といった応募経路の差異が物語上の差別化要素となる。
街ナンパもの・ハメ撮り・個人撮影系の素人もの作品では、面接シーンが「素人女性が AV に巻き込まれていく」一連の物語の通過点として機能する。
AV 新法以降の制度変化
制度の前後比較
2022 年 6 月成立・施行のAV 出演被害防止・救済法(通称 AV 新法)は、AV 出演契約の手続きを大きく変化させた。出演契約の書面化、契約締結から撮影開始までの待機期間の設定、撮影開始から作品公表までの待機期間の設定、出演者の取消権の明確化等、面接プロセスを含む撮影前段階の制度が大幅に強化された。
これにより、業界の実際の面接プロセスは、AV 新法以前と以降で大きく異なるものとなった。書面契約の確認・コピーの交付、説明事項の読み上げ、出演者からの質問対応、こうした事務的手続きの比重が増し、面接の所要時間も拡大した。
面接ものへの影響
面接ものというジャンルは、AV 新法による制度厳格化を受けて、ドラマ表現としても変化を迫られている。実際の面接プロセスをそのまま撮影することは、出演者の個人情報・実名・住所等が画面に残るリスクを伴うため、近年の面接ものは「撮影用に再現された面接シーン」「ドラマとしての面接ロールプレイ」の比重が増している。
形式上は新法準拠の手続きを別途行い、画面用には「面接的な雰囲気」を持つ撮影シーンを別途用意する制作体制が、業界内で定着しつつある。観客側もこの「画面の面接」と「実際の手続き」の分離を、ジャンルの暗黙の了解として受け入れている。
ジャンルとしての受容心理
不確定性の快楽
面接もののジャンル内核は、「これから何が起きるか確定していない」段階を画面に残す不確定性である。出演者は採用されるかわからない、面接担当者は採用するか決めかねている、こうした未確定状況が「これから始まる撮影」への期待値を増幅する装置として機能する。
採用が決まった瞬間、脱衣の指示が出た瞬間、本撮影への移行が宣言された瞬間、こうした「決定」のターニングポイントが画面の山場として用意される。観客は出演者と同じ立場で「決定」のスリルを共有する構造的快楽を得る。
制度的儀式の暴露
撮影現場の制度的儀式を画面に開示すること自体が、面接もののもう一つの快楽源である。「業界の裏側を見せる」自己言及的な姿勢が、観客に「特別な情報」を共有してもらえた感覚を与える。プロデューサー・ディレクターが画面に現れる、契約書類が映る、面接スタッフの会話が漏れ聞こえる、こうした「業界舞台裏」の演出が、ジャンル内の差別化要素として機能する。
素人性の保存
面接ものは、出演者の「素人らしさ」を画面に残す機能を強く果たす。本撮影に入った後の演技モードの出演者と、面接段階の素の出演者の落差が、ジャンルの主要な視覚的快楽である。緊張で噛む発音、目線が合わない瞬間、業界用語を知らない反応、こうしたディテールが新人作品の質感を構成する。
関連項目
最終更新
「面接もの」の動画作品
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「面接もの」の同人作品
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参考文献
- 『アダルトビデオ革命史』 幻冬舎 (2009)
- 『性風俗産業の社会学』 勁草書房 (2017)
- 『AV出演被害防止・救済法』 日本国法令 (2022)
別名
- 面接
- AV面接
- 面接シーン
- 面接動画