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リビングのソファに二組の夫婦がかけている。最初は会話、次は酒が回り、視線の方向が少しずつ入れ替わっていく。隣に座っているのは自分の妻ではない、向かい側にいるのは他人の夫だ。お互いの配偶者の同意を取り付けた前提で、それでも踏み出す瞬間の躊躇いの方が、画面の中では時間をかけて撮られている。

スワッピングもの(すわっぴんぐもの)は、複数の夫婦が互いのパートナーを交換して性行為を行う設定を中心に据えるアダルトビデオのジャンルである。本項では合意型の交換構造、寝取らせとの関係、寝取られ不倫ものとのジャンル境界、サークル文化との関係を扱う。

概要

スワッピング(英: swappingswinging)は、二組以上の夫婦またはカップルが互いのパートナーを交換して性行為を行う行為を指す英語起源の語である。日本語では「夫婦交換」「カップル交換」「スワップ」などと訳され、AV のジャンルとしては「スワッピングもの」「夫婦交換もの」「スワップもの」と呼ばれる。

ジャンルの最大の特徴は、(1) 複数組のカップル/夫婦が登場すること、(2) 全当事者の事前合意があること、(3) パートナー交換が物語の主軸であること、の三点である。この前提が成立しない場合、隣接ジャンルの不倫もの寝取られもの・寝取らせものに分類される。

ジャンル構成

二組構成

最も基本的な構成は、二組の夫婦/カップルが集まり、互いのパートナーで性行為を行うというものである。事前の打ち合わせ・合意確認のシーン、リビングでの導入の会話、同室・別室での行為、行為後の再合流、こうした時系列を一作品で描く構成が定型である。

「自分のパートナーが別の相手と行為している」状況を、当事者本人がそばで見るパターン(オープン型)と、別室で互いに知らないまま進行するパターン(セパレート型)があり、後者のほうがファン層からの嗜好的支持が厚い。前者は寝取らせ的快楽と重なり、後者は「同時並行で起きている事実」への想像力に依拠する。

多組構成・パーティ型

複数組(三組以上、十組規模)が集まる「カップルパーティ」「スワッパーズパーティ」設定の作品もある。会員制クラブ・別荘・温泉旅行といった舞台に、複数の夫婦が集まり、その夜のうちに任意のパートナーと交換して行為を行う。

「相手選び」の駆け引きが物語の主軸になる場合、互いに視線を交わす導入シーン、ペアリング決定のミニゲーム、分散しての行為、終盤の感想交換、といった独特のシーン構成が組まれる。会員制スワッパーズクラブを描く作品では、入会面接・更新審査・先輩夫婦からの説明等、サブカルチャー的な制度描写が踏み込まれる。

寝取られ・寝取らせとの関係

ジャンル境界

寝取られ(NTR)は、自分の配偶者・恋人が「自分の知らないところで・あるいは自分の意志に反して」他者と性的関係を持つ設定であり、被害者視点・嫉妬の感情を主たる快楽源とする。寝取らせは、配偶者・恋人を「自分が積極的に他者に差し出す」設定で、所有物としてのパートナーを共有することで興奮する心理を扱う。

スワッピングは、この両者と異なり「両当事者が同時に他者と関係する相互交換」「事前の合意」「同等の対称性」を前提とする。寝取られにある被害者性は薄く、寝取らせにある一方向性も希薄で、「対等な関係の中で配偶者を貸し出して別の相手を借り受ける」という相互交換のフェアネスが、ジャンルの倫理的フレームを構成する。

重複ジャンル

実際の AV 作品では、スワッピングと寝取らせ・寝取られの境界は流動的である。「合意のスワッピング」を建前にしつつ、当事者の一人が情緒的に揺れる構成、「予定通りの交換」が当事者の予期を超えて深く進む構成、こうした境界横断の作品が多数存在する。

ジャンル名としては、「スワッピング」「夫婦交換」を主タイトルに掲げつつ、内容としては寝取らせ寝取られ的な感情の揺らぎが主軸となる作品が多い。観客側もジャンル名に厳格な期待を持たず、雰囲気としての「カップル交換」を一括りに楽しむ消費形態が定着している。

受容心理

共有という所有概念の転換

スワッピングものの観客側の心理は、配偶者を「独占する所有物」ではなく「共有可能な資源」として再定義する文化的想像に依存する。一夫一婦制の標準的な所有概念を一時的に解除し、対等な交換関係に変換する想像こそが、ジャンルの快楽の核心となる。

寝取られが独占の解体に伴う痛みを快楽源とするのに対し、スワッピングは独占の対称的解体への合意を快楽源とする。後者は前者ほどの強い情動を伴わない代わりに、「両性とも対等な解放」という構造的フェアネスへの肯定感を含む。

集団性

複数組が集まる設定そのものが、観客に「集団内での性的開放」のイメージを供給する。家庭という単独の閉じた単位を、複数組のネットワークに開く想像、配偶者を介して別のカップルと結び付く想像、こうした「拡張された性的共同体」のイメージが、ジャンルの背景にある。

文化的言及

海外の系譜

スワッピング/スウィンギングは、1960-70 年代のアメリカで「スウィンガー」と自称する集団のサブカルチャーとして広く知られた。1969 年の映画『ボブ&キャロル&テッド&アリス』(Bob & Carol & Ted & Alice)は、スウィンガー文化の主流メディアでの最初の本格的な扱いとして言及される。1970-80 年代の海外ポルノ産業では、スワッピングは独立したジャンルとして確立した。

日本での展開

日本では 1970 年代のピンク映画成人向け雑誌で「夫婦交換」モチーフが既に扱われていた。AV ジャンルとしては 1990 年代以降に独立カテゴリとして確立し、2000 年代の人妻 AV ブームと並走して、ジャンル内の出演者属性が「中年既婚カップル」を中心とする様態へと変化した。

スワッピングを実践するサークル・パーティの存在は、日本の都市部で 1980-90 年代以降報告されており、AV のジャンルはこうした実在のサブカルチャーをドラマ的に脚色する形で消費されてきた経緯がある。

近年の AV における位置

2010 年代以降、AV ジャンルとしてのスワッピングものは安定した中位ジャンルとして継続している。専属女優ジャンルというより企画もので組まれるパターンが中心で、人妻熟女主演の作品が大半を占める。

2022 年には民放テレビでスワッピングサークルを舞台にしたドラマが放送される(夫婦円満レシピ「交換しない?一晩だけ?」、テレビ東京)など、メインストリームメディアでもモチーフとして言及される機会が出ている。

関連項目

最終更新

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参考文献

  1. 藤木 TDC 『アダルトビデオ革命史』 幻冬舎 (2009)
  2. 中村淳彦 『性風俗産業の社会学』 勁草書房 (2017)

別名

  • スワップ
  • 夫婦交換もの
  • 交換もの
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