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入社一年目、まだ髪型が学生時代のままで、リクルートスーツのは少し大きく余っている。歓迎会の二次会で先輩に勧められた酒を断り切れず、終電を逃し、「うちで休んでいけば」と言われた時の頬の赤らみ。社会人として何かを背負い始めたばかりの背中が、画面の中で迷っている。

新人 OL もの(しんじんおーえるもの)は、入社直後の女性社員を主役に据えるアダルトビデオのシチュエーションジャンルである。本項ではリクルートスーツという衣装記号、研修・歓迎会・上司との関係を中心とする物語構造、職場新人特有の心理表現、ジャンル内の派生形態を扱う。

概要

新人 OL ものは、職業設定型の AV ジャンルの中で、特に「入社直後・新入社員」という時期的状況を主軸に据える派生ジャンルである。一般的なOL ものが職場での女性社員の性的状況全般を扱うのに対し、新人 OL ものは「社会人としての経験が浅い」「業務上の上下関係に対する適応が未完了」「学生時代の身体性が残る」といった「過渡期」の特性を演出の核に据える。

主人公は 22 歳前後・四年制大卒一年目の設定が定番で、実年齢としては AV 女優の若手・新人クラスが起用されることが多い。設定年齢と出演者の実際の若さが重なることで、「フィクション内の新人」と「業界での新人」が二重に重なる演出効果が生まれる。

衣装記号

リクルートスーツ

ジャンルの最重要衣装記号は、新卒就活生・新入社員が着用する「リクルートスーツ」である。黒・濃紺の二つボタンジャケット、白いシャツ、膝丈のタイトスカート、ベージュのストッキング、ローヒールのパンプス、こうした規格化された装いが、日本企業の新人標識として観客に共有されている。

リクルートスーツは個性を消す匿名性の制服として機能する一方、AV の文脈では「未成熟な社会人としての制服」を「個別の女性」に着せ替える反転が起きる。ジャケットを脱ぐ、シャツのボタンを外す、タイトスカートをまくる、ストッキングを破る、こうした脱衣の段階が、「就活生・新人」という匿名的役割を「個別の女性身体」に解体していく演出として作動する。

ID カード・名刺・社章

入社直後の社員が身につける物品(ID カードのストラップ、社員番号、名刺入れ、社章ピン)は、ジャンルの補助的記号として作品中に登場することがある。「ID カードを首から下げたまま脱がされる」「社員証の写真を見せながら自己紹介する」といった、職業帰属を示す物品を残したままの脱衣が、職場と性的状況の接続を強調する装置として機能する。

物語構造

研修・OJT

入社直後の研修・OJT(オン・ジョブ・トレーニング)期間は、上司・先輩との一対一の指導機会が多く、密室状況が職務上の正当な実で生まれやすい。「業務指導」「マナー研修」「文書作成講習」「営業同行」「資料整理の手伝い」といった任務の延長で、二人だけの時間が物語上自然に成立する構造を持つ。

新人側の「うまくできなかった」「叱責された」「励ましてもらった」といった業務上の感情変動が、職場ロマンスの定型化された駆動力として用いられる。研修期間のミスとそのフォロー、業務後の遅い夕食、終電を逃した後の流れ、こうした時系列が定石的に組まれる。

歓迎会・接待

入社直後の社員にとって、歓迎会・職場の飲み会・取引先との接待は、職場の人間関係を学ぶ重要な場である。AV の文脈では、これらが「酔いの過程で関係が変質するきっかけ」として機能する。

「お酒に弱いのに勧められて飲む」「終電を逃して上司の家に泊まる」「タクシーで送ってもらった先で」といった展開は、新人 OL ものの定番シーンとして高頻度で組まれる。宴会の席順・席替え・隣の席の上司との会話・お酌・帰り道、これら一連の流れが新人特有の不慣れさで彩られる。

取引先・出張

入社一年目の社員が初めて経験する出張・取引先訪問・営業同行といった業務上の状況も、新人 OL もののバリエーションとして頻出する。先輩社員に同行する形での新人の「初めての」シリーズ展開で、出張先のホテル、取引先の応接室、営業同行先の社用車、こうした場面が物語の舞台となる。

出張もの秘書もの受付嬢ものといった隣接ジャンルとは、職場ロールの違いで区別されつつ、「新人」属性で重なり合う関係にある。

受容心理

不慣れさの快楽

新人 OL ものの観客側の主たる楽しみ方は、「社会人としての不慣れさ」「業務的緊張」「先輩・上司への遠慮」といった、新人特有の心理的体勢を性的シーンに持ち込むことにある。学生から社会人への過渡期にある女性が、職場では決して見せない側面を密室で見せる、その落差そのものが快楽源である。

経験のない新人が業務指導の延長で性的状況に巻き込まれる、断れない雰囲気で押し切られる、戸惑いながら受け入れる、こうした非対等な権力関係の演出が、ジャンル内の標準的な作劇法となっている。

制服の規格性

リクルートスーツという規格化された衣装は、「全員同じ装い」「個性が消されている」「ロボット化された就活生群」といったイメージを観客に喚起させる。この匿名的な制服を「特定の女性身体」に着せ替えることで、規格化と個別化の往復が生まれる。「無数にいる新入社員の中の一人」を「他ならぬこの彼女」に取り出す視覚的反転が、ジャンルの構造的快楽の一部を成す。

同期・先輩・上司

新人 OL ものは、組織内の年齢・役職階層を物語に持ち込みやすい点でも特徴的である。同期入社のライバル、年上の先輩女性社員、ベテラン上司、人事課の担当者、こうした複数の登場人物が、新人主人公を中心とする職場の人間関係を構成する。複数キャラクターを登場させやすい構造が、企画ものとして展開しやすい理由でもある。

ジャンルの派生

新卒・第二新卒・転職

ジャンルの派生として、第二新卒(入社 2-3 年目で転職した新人)、中途入社(別業種からの転職組)、派遣社員(派遣先での新人)等のバリエーションがある。いずれも「新しい職場での適応期」を物語上の駆動力とし、新人 OL ものの基本構造を共有する。

派遣 OL もの・契約社員ものは、雇用の不安定さを「断れない弱者性」として演出に組み込むケースもあり、ジャンル内の倫理的トーンが分かれる要素となっている。

業種別の細分化

総合職・一般職・事務職・営業職・受付・秘書・経理といった職種設定により、衣装・舞台・物語が細分化される。証券会社・銀行・商社・メーカー・出版社といった業界設定もバリエーションを生む。これら職種・業界の差異は、新人 OL ものの基本フォーマットの上で個別作品の差別化要素として機能する。

関連項目

最終更新

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参考文献

  1. 藤木 TDC 『アダルトビデオ革命史』 幻冬舎 (2009)
  2. 中村淳彦 『性風俗産業の社会学』 勁草書房 (2017)
  3. 鈴木涼美 『AV女優の社会学』 青土社 (2013)

別名

  • 新入社員もの
  • 入社もの
  • 新人OL
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