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サバサバ系萌え

sabasabakeimoe

居酒屋の二軒目、終電を逃したか逃さないかで揉めている同僚たちの真ん中で、彼女だけが「あ、私もう帰るね、お疲れ」と一言だけ残して上着を手に取る。湿っぽい別れ言葉も、未練がましい確認もない。男友達と同じ温度で笑い、同じ温度で帰っていく。背中を見送りながら、こちらだけが妙に未練を残している。

サバサバ系萌え(さばさばけいもえ)は、感情を引きずらず、人間関係に湿度を持ち込まない、いわゆる「サバサバした」性格の女性に対する強い愛着・性的興奮を抱く嗜好の総称である。男友達と同じような気安さで接してくる軽やかさと、ふとした瞬間に覗く女性性とのギャップが組み合わさり、2010 年代以降のキャラクター造形で安定した類型を形成してきた。

概要

サバサバ系の核は、対人関係における 「湿度の低さ」 である。一般的に女性キャラクターに付与されがちな粘着的・嫉妬的・湿性的な感情記号を、意図的に削ぎ落とした造形を指す。喧嘩しても引きずらない、過去の元彼の話を笑い話としてさらっと済ます、男性の友人関係に余計な詮索をしない、こうした「湿っぽくならない」反応の連続が、サバサバ系の振る舞いの記号体系を構成する。

属性データベース上では、ボーイッシュと隣接するが完全には重ならない。ボーイッシュが外見・服装・声質を含めた総合的な男性性記号の借用を指すのに対し、サバサバ系は性格と対人態度の質に限定される。容姿は普通に女性的でありながら、対人態度だけが男性的な気安さを帯びるという組合せが、サバサバ系の典型造形である。

語源と類型史

「サバサバしている」という語そのものは、戦後の日常語として「執着が少ない・潔い」性格を指す形容詞として定着していた。その意味で、サバサバな人物像自体は古くから日本の物語に存在する。1990 年代以降、女性誌・恋愛特集記事・恋愛指南本が「サバサバ系女子」を独立した恋愛市場上のセグメントとして扱いはじめた。

2010 年代に入り、SNS 上で「自称サバサバ女子」という揶揄的なミーム(本人だけがサバサバを自称し実際は粘着質、というジョーク)が広く流通したことで、属性そのものへの社会的認知度が一段上がった。サブカル文脈では、ライトノベル・エロゲエロ漫画 のヒロイン陣の中に、湿気の少ない明朗系を一枠配置する構造が定着し、サバサバ系の枠が常設化された。

受容心理

サバサバ系萌えの心理的核は、関係維持コストの低さ への愛着である。粘着的な恋愛は脳の認知資源を消費する。ヤキモチ、未練、過去の蒸し返し、しつこい確認連絡といった「重い」要素を最初から免除してくれる相手は、現代の都市的な対人関係様式と親和的である。受け手は、サバサバ系ヒロインに対して「楽な関係」「ストレスフリーな関係」の理想像を投影する。

この機能性のうえに、もうひとつの萌え核が乗る。「ふとした瞬間に覗く女性性」 である。普段は男友達と変わらない態度で接してくる相手が、二人きりの場面で予想外に女性らしい反応を見せる。照れる、恥じらう、依存する、こうした湿性側の反応が普段との落差を伴って出現する瞬間が、サバサバ系作品のクライマックスとして配置される。これは典型的なギャップ萌え構造であり、湿性側を初期値として湿性側の解放を見せるツンデレとは時間的順序が逆転している。

性表現における展開

性表現作品におけるサバサバ系ヒロインの典型的な台本構造は、前半で乾いた友人関係を確立し、後半で予想外の湿性反応を引き出す展開である。本人は「私そんな深く考えてないから」「気にしないで」と軽く扱おうとするのに、行為の最中に思わず甘えてしまう、後で「もう一回会える?」と消え入るような声で確認してしまう、こうした「サバサバが崩れる」一点が物語の山場として機能する。

エロ漫画・ライトノベル・エロゲでは、サバサバ系の幼馴染・サバサバ系の同僚 OL・サバサバ系の先輩女子大生といった組合せが定型である。AV業界でも、企画名に「あっけらかん」「サバサバ系」を明示する作品群が安定して制作されている。

派生形態

体育会系サバサバ

スポーツ系部活・運動系職業と組み合わさり、健康的・直線的な人物像を形成する。湿度の低さが体育会的な気質と相互強化される。

兄貴肌・姉御肌

サバサバの拡張として、後輩・部下の面倒をよく見る世話焼き要素が加わる類型。性的場面では「世話を焼くつもりが、自分が崩れる」展開が定型化する。

自称サバサバ

実際は嫉妬深く粘着的だが、本人だけがサバサバを自認しているコメディ寄りの派生型。SNS 由来のミームとして定着し、ライトノベル・漫画でメタギャグの素材となる。

関連項目

最終更新

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参考文献

  1. 斎藤環 『戦闘美少女の精神分析』 太田出版 (2000)
  2. 東浩紀 『動物化するポストモダン』 講談社現代新書 (2001)
  3. 『現代用語の基礎知識』 自由国民社 (2014) — 「サバサバ系女子」「自称サバサバ女」を項目化

別名

  • サバサバ系
  • サバサバ女子
  • sabasaba
  • cool girl moe
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