ハイレグの胴体、つるりと黒光りするサテンの面、太腿の付け根を斜めに切り上げる V 字、頭の上には立ち上がった長い耳、腰の後ろには白い綿毛。トランプの記号のような単純化された輪郭が、人間の身体を一個の図像に変換する。バニーガールは女装の一種でありながら、現実の動物にも現実の女にも似ていない、純粋なグラフィック上の生き物として 60 年以上消費され続けている。バニーガール(英: bunny girl, playboy bunny)とは、ウサギの耳と尾を模した装飾を伴う特定様式のレオタード型衣装を着た女性、またはその衣装姿そのものを性的興奮の対象とする嗜好の総称である。
語源と定義
英語 bunny は子ウサギの愛称。ヒュー・ヘフナーが 1960 年シカゴに開いた「プレイボーイ・クラブ」で、給仕(ホステス)の制服として導入した一連の意匠を指す。標準仕様は次の七要素からなる:1) ハイレグのサテン地レオタード、2) コルセット風の絞り、3) 純白のフロント襟と蝶ネクタイ、4) 白いカフス、5) 黒の網ストッキング、6) ハイヒール、7) ウサギ耳のヘッドバンドと腰の付け尾。プレイボーイ社はこの意匠を意匠登録し、長らく使用を独占的に管理してきた。
日本では 1970 年代以降、ナイトクラブ給仕・テレビ番組のアシスタント衣装として広まり、1990 年代のコスプレ文化の中で「キャラクター属性」として独立した。アダルト領域では 2000 年代以降、コスプレ AV の標準衣装の一つとなった。
歴史
1960 年 2 月 29 日、シカゴのプレイボーイ・クラブ開店時にバニー衣装が初めて披露された。クラブ共同創業者の一人ヴィクター・ラウンズと交際していたイルゼ・タウリンス(Ilse Taurins)が、雑誌のラビット・ロゴから着想したコスチュームを提案し、お針子だった彼女の母が試作を縫い上げたとされる。試作はワンピース型水着に近い形だったが、ヘフナーの指示で脚の付け根のラインがハイレグに切り上げられ、現在の様式に至った。創業初期には店内給仕(プレイボーイ・バニー)の制服であり、客が触れることを禁じる「Bunny Touch Rule」も存在した。グロリア・スタイネムが 1963 年に潜入取材し『Show』誌に掲載した「A Bunny’s Tale」は、職場としてのプレイボーイ・クラブの実態を告発し、第二波フェミニズムの古典となった。
1986 年に米国本土のクラブはほぼ閉鎖されたが、衣装は文化的記号として独立に生き残った。1980-90 年代のロック系ミュージックビデオ、東京ディズニーシーのスタッフ衣装、ナンセンス・コメディのアイコンとして繰り返し再生産された。日本のテレビでは『8 時だョ!全員集合』『オールナイトフジ』など多くの番組で女性アシスタントが着用し、1990 年代以降は秋葉原のメイド系・コスプレ系店舗の制服として実用化された。
嗜好の構造
バニー衣装の性的記号性は三層からなる。第一層は「ハイレグ+網タイツ」の脚部強調で、腰骨から踵までを途切れなく繋ぐ単色の長い線が、生身の脚よりも長く見せる視覚効果を生む。第二層は「動物属性」の遊戯性で、人間が動物の一部を装着することによる擬獣化が、現実から半歩離れた幻想空間を作る。第三層は「給仕記号」の従属性で、白襟・蝶ネクタイ・カフスが「客に奉仕する側」であることを瞬時に示し、関係性の権力差をあらかじめ衣装が宣言する。
受け手にとっての魅力は、生身の女性が衣装をまとった時の身体線の人工的な美しさと、衣装そのものの非日常性にある。普段着の女が脱衣する物語ではなく、すでに「キャラクター」になった女が衣装を着たまま行為に至る方が嗜好の中心線であり、着衣プレイ・着エロ的志向と強く接続する。
派生形態
- 黒バニー:標準仕様、サテン黒地
- 白バニー:結婚式系・新雪系の派生
- 色違いバニー:赤・ピンク・パステル系
- メイド・バニー:メイドとバニーの混成
- けものみみ系バニー:ウサギ耳を実物の獣耳として扱うコスプレ
- バニースーツのみ・耳なし:意匠の脱構築
- アニメキャラ・バニー:既存キャラのバニー版イラスト
文化的言及
英米ではプレイボーイ・クラブ閉鎖後も衣装そのものはハロウィン・コスチュームの定番として残り、毎年大量に流通している。フェミニズム陣営からは「女性身体の動物化」「客体化」の代表例として批判され続けてきた一方、近年のドラァグ・カルチャー・バーレスク復興・LGBTQ+ プライドの中ではキャンプ的アイコンとして再評価されている側面もある。
日本では「バニーガール」は実在の職業ではなく、ほぼ純粋にキャラクター属性として消費される。アニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(2018)など、衣装そのものが作品題名に含まれる事例も多く、コスプレ・ロールプレイの中核衣装として制服・メイドと並ぶ地位にある。
関連項目
最終更新
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参考文献
- 『Mr. Playboy: Hugh Hefner and the American Dream』 Wiley (2008) — プレイボーイ・クラブとバニー制服成立史
- 『Bunny: The Real Story of Playboy』 Michael Joseph (1984)
- 『ジャンル別 AV 大全』 コアマガジン (2014)
- 『コスプレ文化研究』 新曜社 (2013)
別名
- bunny girl
- bunnygirl
- playboy bunny
- バニースーツ
- うさぎコスチューム