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胸下からまでを覆う前後二枚の布の縫い目に、鯨ひげや金属のボーン(芯材)が縦に通っている。後ろの紐を強く引き、紐どうしを編み込むように締め上げる。装着者の胴回りが数センチ単位で物理的に狭まり、上半身の補強と下半身への絞り込みによって、現実離れした砂時計型のシルエットが現れる。それがコルセットの構造である。

コルセット(こるせっと、英 corset)とは、胸下から腰までを締め付け、女性の上半身の体形を補整・装飾するための女性用下着・装飾衣装の総称である。本項では 16〜19 世紀ヨーロッパでの普及、20 世紀の衰退、現代のBDSMコスプレ ・ファッションでの利用、フェティッシュ文脈での扱いを扱う。

概要

コルセットの構造は、(1) 前後または前左右に分割された複数のパネルからなる布製の本体、(2) パネルに縫い込まれたボーン(鯨ひげ・金属・プラスチック等の硬質芯材)、(3) 後ろまたは前を貫く編み上げ紐、(4) 装着時に紐を引いて締め上げる構造、にある。

装着すると、装着者の胴回り(ウエスト)は紐の張力に応じて物理的に絞られ、上半身の脂肪と内臓が再配置される。長期着用者ではウエストが永続的に細くなる(タイトレース文化)報告もある要出典

16〜19 世紀の普及

コルセットの原型は 16 世紀のイタリア・スペイン宮廷で成立し、17〜19 世紀のヨーロッパで貴族・市民女性の標準下着として定着した。とりわけヴィクトリア朝(1837〜1901)のイギリスでは、女性の身体表象として「砂時計型のシルエット」が理想化され、強くタイトレースされたコルセットが社会的・性的魅力の標識として機能した。

医学的には肋骨変形・内臓圧迫・呼吸機能低下などの健康被害が指摘され、19 世紀末から女性解放運動(ドレス改革運動)が緩いコルセット・コルセットレスへの転換を訴えた。1910 年代から 20 年代にかけて、ブラジャー・ガードルへ機能分化が進み、日常着としてのコルセットは廃れた。

衰退と残存

20 世紀後半、コルセットは日常衣装としては完全に廃れ、(1) 結婚式の特殊衣装(ウェディングコルセット)、(2) バレエ・オペラ・古典劇の舞台衣装、(3) BDSMフェティッシュ コミュニティでの装備、(4) コスプレ・サブカルチャーファッション、として残存した。

BDSM 領域では、コルセットは拘束 と装飾を兼ねた服飾として位置づけられる。強くタイトレースされたコルセットの装着は、(1) 物理的拘束効果(動作・呼吸の制限)、(2) 視覚的な身体加工、(3) 装着者の従属的役割の演出、を兼ねる装備として用いられる。

フェティッシュ文脈での扱い

コルセットへの嗜好(corset fetish)は、(1) 締め付けによる身体加工そのものへの興味、(2) ヴィクトリア朝の歴史的なイメージへの憧憬、(3) メイド服 ・ゴスロリ などのキャラクター記号としての魅力、(4) 緊縛拘束 との連続性、に分かれる。

エロ漫画AV では、メイド服・ヴィクトリアン衣装・ゴスロリ コスチュームの構成要素として描かれることが多く、独立した「コルセット責め」「タイトレース調教」のジャンルもニッチに存在する要出典

現代のタイトレース文化

世界的にはタイトレース(極端な締め付けによる胴体形成)を継続的に行うコミュニティが残存しており、(1) ウエスト 40 センチ台への縮小を目指す愛好者、(2) 24 時間装着型の生活、(3) 写真・SNS 発信を伴う visibility 文化、を形成している。健康リスクの管理を前提に、衣装としてのコルセット文化が継承される領域として独自の位置を占める要出典

関連項目

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参考文献

  1. 青木英夫 『下着の文化史』 明玄書房 (2007)
  2. ヴァレリー・スティール 『コルセット文化史』 青弓社 (2003)
  3. Valerie Steele 『The Corset: A Cultural History』 Yale University Press (2001)

別名

  • コルセット
  • corset
  • 締め紐コルセット
  • Victorian corset
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