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事務所のロビーを抜けた奥のプロデューサー室、深夜まで明かりが消えない一室、書類が積まれたデスクの前のソファ。今月のオーディション結果を伝えに来た新人タレント、デビュー曲の出来を相談する練習生、引退の意思をにしに来た中堅メンバー。「ちょっと座って」と言われて掛ける革張りの椅子、ガラステーブルに置かれるグラス、扉の鍵が回る音。事務所での評価、デビュー枠の配分、雑誌の表紙起用、こうした業務上の決定権を握る人物との一対一の場面が、物語装置の中核を成す。

アイドルもの(あいどるもの)は、芸能プロデューサー・マネージャー・事務所社長など芸能事務所の運営・管理側の人物と、所属するアイドル・タレント・モデル・グラビアアイドル・新人女優の関係を題材にした成人向け作品の総称である。本項ではアダルトビデオ・成人漫画・エロゲを横断するシチュエーションジャンルとしてのプロデューサーものを扱う。

概要

アイドルものは、芸能産業を題材にする職業ものAVのなかで、撮影現場ではなく事務所内・楽屋・控室を主要舞台とするサブジャンルである。元アイドル配信グラビアアイドルに関わる作品群と隣接領域を成し、芸能産業の構造そのものを物語装置に組み込む点で他の職業ものと区別される。

舞台は芸能事務所の社長室・プロデューサー室、レコーディングスタジオ、撮影スタジオの楽屋、ライブ会場の控室、地方公演先のホテル、車での移動中などである。事務所のソファ、楽屋の鏡台、控室のロッカー、こうした「業界の裏側」の物理的記号が画面構成の基盤を成す。

物語装置

権力差と評価権

ジャンルの中核装置は、プロデューサー側がタレントの評価・起用を決定する権力を持つ点である。デビュー曲のリリース、雑誌の表紙起用、テレビ番組の出演枠、グループ内のセンター指名、こうした業務上の決定が物語の駆動力となる。

タレント側は将来のキャリアをこの人物に握られているという構造的な脆弱性を持ち、その脆弱性が性的接近の物語上の口実を提供する。学業評価を握る家庭教師、競技成果を握るコーチと装置構造は近いが、芸能産業特有の「評価が公衆の面前で可視化される」という性質が、ジャンルに独自の緊張を持ち込む。

枕営業・接待

「枕営業」と俗称される構造は、ジャンルの定番モチーフの一つである。事務所内での性的関係、上層部との関係、業界関係者との接待、こうした要素は物語装置として頻繁に用いられる。商業AV作品においてはあくまでフィクションとして描かれており、現実の芸能産業の構造を直接描写するものではない要出典

成人漫画・エロゲでは、より極端に枕営業を物語化した作品が存在し、新人タレントの育成過程そのものを性的フィクションとして組み立てる構成が用いられる。

マネージャー・付き人

プロデューサーよりも下位の役職である専属マネージャー・付き人を主役にする派生も存在する。地方ロケでの長時間移動、深夜の運転、ホテルでの宿泊、こうした「タレントと近接距離で過ごす業務」が物語装置となる。マネージャーものは権力差というより日常的近接を主題とし、同棲ものに近い感覚を持つ。

物語型

新人育成型

最頻出パターンは、新人アイドル・新人タレントの育成過程を描く型である。オーディションでの発掘、レッスンの受講、デビュー前の指導、初仕事の同行といった段階を踏みながら、プロデューサーとの関係が変化していく構成が用いられる。「育成」という言葉が物語上の正当化として機能する点で、家庭教師ものと装置を共有する。

中堅・引退期

中堅タレントが伸び悩み、契約更新やポジション変更を巡って関係が動く型もある。引退間際のグラビアアイドル、結婚を前にしたタレント、こうした人物造形は人妻もの・元アイドル系との接続を持つ。

グループアイドル・複数関係

複数のメンバーから成るグループアイドルを題材にする場合、メンバー同士の関係(ライバル関係、序列、嫉妬)を物語に組み込む構成が用いられる。プロデューサーが複数メンバーと関係を持ち、メンバー間の競争を煽る型は、ハーレム的構造との接続を示す。

女性プロデューサー・男性タレント

逆方向のパターンとして、女性プロデューサーが男性タレント・男性アイドルを管理する型も少数存在する。商業BL作品・ヤオイ系では、男性プロデューサー・男性タレントの関係を描く作品が独立した市場を形成している。

隣接ジャンル

芸能スカウトAV女優のスカウト業界とは現実の業界事情を反映する点で接続するが、本ジャンルは芸能産業全般(音楽、テレビ、グラビア)を含む広い領域を扱う点で範囲が異なる。グラビアアイドル人物伝・元アイドル配信とは、芸能産業の人物像を共有する隣接領域として位置づけられる。

家庭教師ものスポーツトレーナーものとは、指導関係の権力差を性化する物語型を共有する。指導対象が学業・競技・芸能と異なるが、装置構造は共通する。

受容心理

アイドルものの中核的な訴求力は、芸能産業に対する大衆的な関心と、その裏側で何が起きているのかという想像の領域を物語化する点にある。テレビ・雑誌・SNSで公的に提示されるアイドル像と、業界の内部で起きていると想像される事象の落差が、ジャンルの主要な快楽源となる。

ロールプレイ系の感覚とも接続し、プロデューサー役・新人タレント役という設定そのものが、視聴者にとって明確な物語フレームを提供する。商業AVでは、出演者が「アイドル候補生役」を演じる企画作品が定常的に制作されている。

近年はVtuber・配信者産業の隆盛に伴い、配信プロダクションの運営者と所属配信者の関係を題材にする作品も登場しており、ジャンルは伝統的な芸能産業の枠を越えて拡張しつつある。

関連項目

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参考文献

  1. 藤木 TDC 『アダルトビデオ革命史』 幻冬舎 (2009)
  2. 中森明夫 『アイドル工学』 ちくま文庫 (2017)
  3. 鈴木涼美 『AV女優の社会学』 青土社 (2013)

別名

  • アイドルプロデューサーもの
  • 芸能プロデューサーもの
  • マネージャーもの
  • idol producer ero
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