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深夜のディスコードの通話。画面の中ではキャラクターが並んで立っている。もう何ヶ月も同じパーティで一緒にダンジョンを攻略している相手が、画面の向こうで小さく笑う声。アバターの背丈、装備の見た目、調の癖、ボイチャでの呼吸音、現実には会ったこともない相手の像が、これだけの情報で頭の中に立ち上がる。約束した日、駅の改札で「あの人かも」と直感する瞬間、ゲーム内のキャラと現実の人物が一気に重なる。ネット越しに何百時間も共有してきた時間が、物理的な対面の数秒で意味を変える。

ネトゲもの(ねとげもの)は、オンラインゲーム・MMORPG・FPS・通話アプリ・SNSといったネット環境を介した出会いから関係が始まる成人向け作品の総称である。本項ではアダルトビデオ・成人漫画・エロゲ同人音声を横断するシチュエーションジャンルとしてのネトゲものを扱う。

概要

ネトゲものは2000年代以降、家庭用インターネット環境とMMORPGの普及に伴って成立したジャンルである。初期はテキストチャット中心の出会いを描いていたが、ボイスチャット・動画通話・VRチャットが普及するにつれて、関係の質感もテキスト中心から音声・映像中心へと変化してきた。

舞台は基本的に二重構造を持つ。一方はゲーム内・SNS内という仮想空間で、ここでは登場人物はアバター・ユーザー名・キャラクター画像として存在する。もう一方は現実の住居・職場・待ち合わせ場所で、こちらでは生身の人物として登場する。この二重性をいかに往還させ、いかに統合するかが物語の主要な工夫となる。

物語装置

アバターと中の人

ネトゲものの中核設定は、ゲーム内アバターと現実の本人との落差である。ゲーム内で女性キャラクターを操作している相手が現実では男性だった、強面のアバターを使う相手が実物は穏やかな人物だった、こうした「ネカマ・ネナベ」的構図はジャンル成立期から定番モチーフとして用いられてきた。近年は、ボイスチャットの普及によって性別偽装が困難になり、代わりに「アバターは美形だが現実は普通の人」「ゲーム内では強気な口調だが現実では人見知り」といった性格・印象の落差が物語の中心に置かれる。

Vtuber系エロとは隣接ジャンルとして発展しており、アバター越しの関係性を扱う点で共通する装置を持つ。

オフ会・初対面

「初めて会う日」はネトゲものの最重要シーンである。駅の改札、カフェ、ゲームショップの前といった待ち合わせ場所、目印を握りしめて立つ相手、想像とのズレを確認する一瞬、これらは作品ジャンルを問わず定型化している。エロ漫画エロゲでは、初対面の場面を一話分かけて描く構成が多い。

初対面後の展開は、相手の家への移動、ホテルへの直行、二人で深夜の街を歩く、再びネット上で会話する、こうした分岐に派生する。商業AVでは「初対面で部屋まで行ってしまう」展開が物語上の山として配置されることが多い。

ネトゲ廃人・引きこもり

ネトゲ廃人・引きこもり気味の登場人物を主軸にした作品もある。昼夜逆転の生活、部屋に積み上がったゲームグッズ、ネット越しでしか他人と関係を持てない状態、こうした生活描写が前段に置かれる。再会後の関係発展が、現実の生活そのものを変えていく構成は、同棲もの純愛系との接続を示す。

受容心理

ネトゲものの中核的な訴求力は、現代の出会いの形そのものを物語化している点にある。マッチングアプリ・SNS・オンラインゲームを介した出会いが現実の主要経路となる中で、視聴者は自分自身の経験あるいは想像できる範囲の経験として作品の設定を受け入れる。「画面の向こうにいた相手が実物として現れる」という感覚は、現代の視聴者にとって直感的に理解可能な物語装置である。

ボイスチャットの音声、タイピングの音、ゲームのBGMといった音響要素は、ASMR系の感覚と接続する。同人音声では「ネトゲで知り合った彼女と初めての通話」「オフ会後に同棲を始めた彼女」といったシナリオが、定番ジャンルとして存在する。

派生形態

マッチングアプリ系

オンラインゲームではなく出会い系アプリ・マッチングアプリ経由の出会いを描く作品は、ネトゲものの隣接ジャンルとして並列的に発展している。プロフィール写真、メッセージのやり取り、初デートの待ち合わせ、こうした要素は重なるが、ゲーム内アバターという「別人格の媒介」がない点で構造が異なる。

Vtuber・配信者系

Vtuber・配信者・実況者を題材にした作品も、ネトゲものの近接ジャンルである。視聴者と配信者の関係、コラボ配信での出会い、配信外でのオフ会、こうした構造はネトゲものの装置を変形して用いている。アイドル的な公的人物との関係を描く点で、純粋なネトゲものとは異なる物語感覚を持つ。

MMORPG・恋愛アバター

エロゲ系では、MMORPG設定を作品世界そのものとして採用する作品がある。ゲーム内で出会ったヒロインとの恋愛が、ゲーム内・現実の双方で並行進行する構成、ログイン中のみ会える幻のヒロインを描く構成、いずれもメディアミックス的な物語構造を持つ。

関連項目

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参考文献

  1. 藤木 TDC 『アダルトビデオ革命史』 幻冬舎 (2009)
  2. 辻大介 『ネット恋愛の心理学』 ナカニシヤ出版 (2013)
  3. ばるぼら 『電脳遊戯の少女たち』 DU BOOKS (2019)

別名

  • ネトゲもの
  • オンラインゲーム恋愛
  • ネトゲ恋愛
  • online game ero
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