膣の奥に手を伸ばすと、円形の突起のような塊に指先が触れる。それは子宮 の入り口、解剖学では「子宮膣部(portio vaginalis)」と呼ばれる。日本の AV・性教育言説のなかでは、これを「ポルチオ」とラテン語の語頭だけで呼び、特定の深部内性感帯として論じる慣行が定着している。
ポルチオ(ぽるちお、ラテン語 portio (vaginalis) uteri の前半部からの借用)とは、子宮 頸部の膣内に突出する部分(子宮膣部)を指す医学用語が、日本語の性的言説に転用された語である。本項では解剖学的位置、性感帯 としての論じられ方、ポルチオオーガズム言説の検討、AV ・性教育での扱いを扱う。
解剖学
子宮膣部は、円柱状の子宮 頸部のうち、膣内へ突出する部分を指す医学用語である。径 2 から 3 センチメートルの円形をした凸面で、中央に子宮口が開口する。膣壁との接合により膣円蓋(前・後・左・右側壁)が形成され、後膣円蓋(ダグラス窩への近接部)が最も深く、性交時の挿入の終点となる。
組織学的には子宮頸部は重層扁平上皮(膣側)と円柱上皮(子宮腔側)の移行領域を持つ。一般的に痛覚は鈍く、機械刺激に対しては深部圧覚として知覚される。これが「子宮を押される感覚」として体験される神経基盤となる。
性感帯としての位置づけ
日本の性教育・AV 言説では、ポルチオを「子宮を直接刺激される深部内性感帯」として論じる慣行がある。具体的には、(1) 挿入の最深部での衝突感、(2) 「子宮への突き上げ」と表現される圧覚刺激、(3) 子宮頸部周辺の自律神経応答による全身的な反応、を「ポルチオ刺激」と呼ぶ。
ポルチオ刺激によるオーガズム は、クリトリス オーガズム・G スポット オーガズム・A スポット オーガズムと並ぶ独立カテゴリーとして語られることが多いが、医学的にこれらが明確に異なる神経機構を持つかどうかは議論がある要出典。
ポルチオオーガズム言説の検討
「ポルチオオーガズム」の概念は、欧米の性科学文献では「子宮頸部刺激による反応(cervical stimulation)」として 1980 年代から検討されてきた。Komisaruk らの研究では、子宮頸部刺激がクリトリス 刺激とは異なる神経経路(主に骨盤神経・迷走神経)で中枢に伝達されることが示されている。
日本では 2000 年代以降の性感マッサージ 言説で「ポルチオ開発」「ポルチオ性感」が広く論じられ、AV ジャンルとしても「ポルチオ責め」「子宮イキ」が定型化した。ただし、ポルチオ単独でのオーガズム到達能力には個人差が大きく、また性的興奮度・パートナーシップ・心理的要因に強く依存することが指摘される要出典。
AV ・性教育での扱い
AV では「ポルチオ責め」「ポルチオ開発」がタイトルやジャンル として用いられ、深部突き・駅弁 ・後背位 等で「ポルチオに当たる体位」が解説される作品が多い。視聴者向けの言説として、「子宮を突かれる快感」「奥イキ」と関連付けて宣伝される。
性教育・性カウンセリング領域では、ポルチオを単独の性感帯として論じる前に、(1) 全身の性的興奮を高めること、(2) 前戯 の十分な実施、(3) パートナーとの信頼関係、(4) 身体的負担(子宮頸部への強い衝突は痛みを伴う場合がある)、を前提とする慎重な扱いが推奨される。
関連項目
最終更新
参考文献
- 『標準産婦人科学 第5版』 医学書院 (2021)
- 『性感帯マップの科学』 光文社新書 (2019)
- 『Williams Gynecology』 McGraw-Hill (2020)
別名
- ポルチオ
- portio
- 子宮膣部
- portio vaginalis
- ポルチオ性感