「ボイン」と発する音にはオノマトペ的な質感がある。「ぼ」の重さと「いん」の弾みが、視覚と触覚を一気に呼び起こす。ボインは、戦後の日本でラジオから流れた一曲のコミックソングを契機として全国に広まった、豊乳を指す俗称である。学術用語でもなく、業界用語でもなく、テレビと寄席の戯謔から生まれた日本語固有の音象徴語である。
ボインとは、大きく豊満な乳房を指す日本語の俗称・口語である。語源は 1968 年に発表されたコミック歌謡『ボインは赤ちゃんの……』(月の家圓鏡)とされ、これ以降テレビ・ラジオ・週刊誌を通じて全国に普及した。漢字表記はなく、片仮名「ボイン」または平仮名「ぼいん」で表記される。
語源
「ボイン」の直接的起源は、1968 年に落語家・月の家圓鏡(後の八代目橘家圓蔵)が歌ったコミックソング『ボインは赤ちゃんの……』とされる。歌詞は「ボインは赤ちゃんの〜 食べ物なのよね〜」と続き、当時のテレビ・ラジオで頻繁に取り上げられて全国的なヒットとなった。これ以前から関西方面の方言・芸人言葉に類語があった可能性は指摘されているが、現在の意味で全国に普及したのは同曲以降である。[要出典]
音象徴語としての構造は、「ぼ」(重さ・量感を示す唇音)+ 「いん」(弾性・撥ね返りを示す撥音)であり、豊満な乳房の物理的特性を音で写実する典型例である。同類の擬音語に「ぷりん」「ぷるん」「たぷたぷ」があり、いずれも肉体の柔らかさ・揺れを音で表現する。
普及と変遷
1970 年代から 1980 年代にかけて、ボインは日本語の口語に定着した。週刊誌・スポーツ新聞のグラビア記事、寄席の漫談、テレビのお色気番組で頻用され、1968 年以前は俗な隠語であった「巨乳」概念に対し、軽く・戯謔的に・公的な場面でも使える語彙として機能した。
1980 年代後半以降、AV 業界の発達と巨乳・爆乳という用語の登場により、業界・専門領域での使用は減少した。代わりに「ボイン」は、より昭和的・戯謔的なニュアンスを帯び、おじさん語彙、寄席的・コメディ的な文脈で用いられる傾向が強まった。
平成以降、若年層では「ボイン」より「巨乳」「爆乳」「おっぱい」が主流となり、ボインはやや古めかしい語感を帯びるようになった。それでも漫画・コメディ・寄席的演出では現役で用いられ、特に人妻・熟女系の文脈では垂れ乳を含む豊満な乳房全般を指す中立的俗称として機能している。
用法と語感
「ボイン」は、巨乳・爆乳と概ね同義で交換可能だが、語感には差がある。
第一に、戯謔性。「巨乳」が即物的・分類的なのに対し、「ボイン」は戯謔・親しみを含む。寄席的な笑いの場で違和感なく使える。
第二に、年齢層。「ボイン」は中高年男性・昭和世代の語彙として位置づけられ、若年層が用いると意図的なレトロ表現と受け取られる。
第三に、サイズ感。「巨乳」「爆乳」がサイズの大きさそのものを指すのに対し、「ボイン」は揺れ・弾力・量感など物理的・触覚的な質感を含意する。Eカップ・Fカップ程度のグラマラス系から、Gカップ以上の爆乳系まで広く適用される。
派生語
- ボイ~ン: 揺れの強調を伸ばし音で表現
- ボインボイン: 揺れの反復、漫画のオノマトペとして頻出
- 巨大ボイン: 強調表現、ほぼ爆乳と同義
- ボインアイドル: 1970-1980 年代に活動したグラマラス系芸能人の総称(夏目雅子・大原麗子等は対象外で、特に『プレイメイト』系芸能人を指す)
文化的言及
『ボインは赤ちゃんの……』(月の家圓鏡、1968)が言葉の発祥点である。週刊誌・スポーツ新聞のグラビア用語として広範に流通し、1980 年代のボディコンファッションブームと相乗して、巨乳イメージの基幹語彙となった。
漫画では『ハレンチ学園』『マカロニほうれん荘』など 1970 年代の少年漫画に頻出し、女性キャラクターの胸部を強調する戯謔的描写の定型語となった。アニメでは『うる星やつら』のラムをはじめ、巨乳ヒロインの記号として「ボイン」のセリフが頻用された。AV 黎明期の作品タイトルにも「ボイン」を含むものが多数存在する。
関連項目
最終更新
「ボイン」の動画作品
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参考文献
- 『ボインは赤ちゃんの……』 (1968)
- 『戦後流行歌史』 講談社学術文庫 (1990)
- 『日本国語大辞典 第二版』 小学館 (2003)
別名
- ボイ~ン
- ぼいん
- boin