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メーカーがあり、事務所があり、撮影所があり、女優がいる、というかつての一本道の代わりに、いまは枝分かれした幾筋もの経路がある。ある女性は SNS で着衣の写真だけを上げ続け、別の女性は myfans でライブをし、また別の女性は同人プラットフォームで一本ずつ動画を売る。中央に統括する組織はなく、しかし全体としては年間数千億円規模の市場になっている。 エロクリエイターエコノミー(えろくりえいたーえこのみー)とは、個人クリエイターが SNS とサブスクリプション型プラットフォームを組み合わせ、性的コンテンツを直接収益化する経済圏の総称である。AV メーカーを中心とする旧来の工業的生産・流通構造に対し、二〇一〇年代後半から並走する形で巨大化した、もう一つの性産業の構造を指す。

「クリエイターエコノミー」の系譜

「クリエイターエコノミー」(creator economy)の語は二〇一〇年代後半に米国のテクノロジー業界で一般化した造語である。SNS・動画・配信プラットフォームを介して、個人が自身のコンテンツを直接収益化する活動全般、およびそれを支える経済圏を指す。

歴史的には、(一)一九九〇年代末のブログによる文章収益化(Blogger 一九九九年・はてなダイアリー二〇〇三年)、(二)二〇〇五年の YouTube 開始と二〇〇八年の広告分配開始、(三)二〇一〇年代の Instagram・TikTok 普及によるインフルエンサー化、(四)二〇一三年の Patreon・二〇一八年の Fanbox を含むサブスク型ファンクラブ化、という段階を経て成熟してきた。日本国内の市場規模は二〇二一年に約一兆三五七〇億円、二〇二三年に約一兆八六九〇億円へと拡大している。

アダルト領域での独立した拡大

クリエイターエコノミーの全領域のうち、アダルト分野は独立した進化を辿った。理由は単純で、健全クリエイター向けプラットフォーム(YouTube・Twitch・Patreon の一部)の多くが性的コンテンツを規約で禁止しており、アダルト専用のプラットフォームを別途要したためである。

二〇一一年に Chaturbate がライブチップ型のキャムプラットフォームを開始、二〇一六年に英国でOnlyFansが立ち上がり、二〇一八年の Leonid Radvinsky 買収以降アダルトに特化、二〇二〇年のパンデミックで爆発的成長を遂げた。日本では二〇二一年にmyfansが登場し、円決済・国内振込で日本人クリエイターの収益化を可能にした。

これらと並行して、FANZA同人・DLsite のような同人系単発販売プラットフォームが個人実写作品の流通を担い、FANTIA・Fanbox が同人作家系のサブスクを担うことで、収益経路の多重化が進んだ。

構造的な特徴

エロクリエイターエコノミーは、AV メーカー中心の旧構造とは次の点で根本的に異なる。

第一に、生産と販売の主体が同一である。出演者本人が撮影・編集・販売を兼ね、メーカー・事務所・流通の中間搾取が薄い。プラットフォーム手数料二〇から三〇パーセントが引かれた残りが直接本人の座に入る。

第二に、SNS が集客の中心装置として機能する。Twitter(現 X)・Instagram・TikTok のフォロワー数が、有料プラットフォームの会員数に直結する。SNS の運用力そのものが収益を左右し、撮影や本人のスペックよりもマーケティング能力が優位に立つ場面さえある。

第三に、長期継続性が問われる。商業 AV は単発作品の販売で完結するが、エロクリエイターエコノミーは月額会員の継続率と SNS フォロワーの維持で成立する。一本のヒットより、毎月の安定的なコンテンツ供給が重要となる。

主要な担い手の類型

担い手のうち、AV 業界からの流入は無視できない。AV 引退後・現役と並行して個人運営を始める女優は二〇二〇年代に急増した。AV女優裏垢はその典型で、メーカー作品に縛られずに本人の素のキャラクターを売る場として機能する。

逆方向の流入もある。SNS で裏垢を運営して支持を広げた女性が、知名度を背景に AV へ進むケースである。境界はゆるやかで、両領域を行き来するハイブリッドな活動が増えている。

元アイドル系配信者元グラビア系配信者はそれぞれの旧領域からの転身組で、すでに知名度を持つ状態から始められる強みがある。一般女性のフォロワー皆無からの参入と比べ、立ち上がりが圧倒的に速い。

経済的不安定さ

市場規模は拡大しているが、個別のクリエイターの収益は極めて不均等である。上位一パーセントが収益の七〇パーセントを占めるという指摘もあり要出典、中下位は月数千円程度で頭打ちになる。商業 AV のような最低保証や事務所のセーフティネットがないため、収入の浮き沈みは個人が直接吸収する。

プラットフォーム依存性も強い。OnlyFans が二〇二一年に一時的に性的コンテンツ禁止を発表した際(数日後撤回)、世界中のクリエイターが移転先を慌てて模索した。決済代行会社(Visa・Mastercard)の方針一つで、サービス全体が機能不全に陥るリスクは継続的に存在する。

制度との緊張

エロクリエイターエコノミーは、性産業を制度化してきた既存の枠組みと緊張関係にある。AV新法は商業 AV を対象に契約書面化・撮影後冷却期間を義務化したが、個人販売・SNS 運用には及んでいない。風営法は店舗営業を対象に組まれており、オンラインの個人運営はその外側にある。

このため、個人クリエイターは商業領域より緩い規制の中で活動できる反面、トラブル発生時の救済も自力に頼らざるを得ない。リベンジポルノ・無断転載・身バレ・脅迫といったリスクへの一次対応は本人が引き受けることになる。制度の追いつきが、二〇二〇年代後半の継続的な政策論点である。

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別名

  • エロエコノミー
  • adult creator economy
  • sex worker creator economy
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