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立ち上がった彼女の背中越し、両脇の下から差し込んだ腕が彼女の後頭部の手前で組み合わされる瞬間、彼女は声を上げる手立てを失う。両腕は背骨に沿って引き上げられたまま固定され、上半身は完全に挟み込まれている。逃れる方向はどこにもなく、本人もそれを理解している。だけは自由だが、その自由は使えない自由として残されている。

フルネルソン体位(ふるねるそんたいい)は、プロレス・格闘技の関節技「フルネルソン」の体勢を性行為に応用した変則体位である。受け手の両脇下から両腕を回し、両手を後頭部の前で組んで上半身全体を挟み込む拘束形態を取る。後背位背面座位の派生形として、エロ漫画AV で 2000 年代以降に独立した類型として認知が進んだ。

概要

「フルネルソン(full nelson)」は、本来 19 世紀後半のキャッチレスリングで成立した関節技の名称である。相手の両脇下から自分の両腕を差し込み、両手を相手の後頭部に当てて挟み込む形で、相手の上半身の自由を完全に封じる。これを性行為の体勢として転用したのがフルネルソン体位で、結合形態は実質的に背面座位立位後背位に近いが、上半身を腕で拘束する点が独立した特徴を成す。

体勢の物理的構造としては、(1) 受け手は前向き、(2) 行為者は受け手の背後から両腕を脇下に通す、(3) 両手を受け手の頭部の前または後ろで組む、(4) 結合は背後から、立位または座位で行う、という配置を取る。受け手の両腕は完全に固定され、頭部の動きも制限される。物理的拘束を伴う変則体位として、SM ・拘束系の演出と直接接続する。

類型史

性行為に応用された「フルネルソン」体位の独立類型としての成立は、明確な起源を特定しがたいが、欧米のアダルト系性愛雑誌・アメリカン・ポルノ作品群で 1980 年代以降、定型的な体位のひとつとして言及されている。日本のサブカル文脈で「フルネルソン」が体位用語として認知されるのは、エロ漫画 表現の多様化が進んだ 1990 年代以降である。

エロ漫画 では、激しい体位描写・拘束系シチュエーションを軸とする作家(沙村広明、ぴょん吉、たけのこ星人など)の作例で類型化が進み、2000 年代以降にはAV 業界でも企画作品のタイトル要素として「フルネルソン」が用いられるようになった。日本語の表記としては「フルネルソン」がほぼ統一されており、和訳の独立呼称(「全羽交い絞め体位」等)が定着するには至っていない。

受容心理

フルネルソン体位の心理的核は、「上半身の完全拘束」 による主導権の非対称性である。両腕を完全に封じることで、受け手は手を下に下ろす、押し返す、相手の動きを抑える、といった選択肢を持たない。同時に頭部の動きも制限されるため、視線を逸らす自由さえ部分的に失われる。腰部だけは自由だが、その自由は単独では機能しない。

行為者側にとっては、相手の身体を自分の両腕でほぼ完全に閉じ込める感覚、および相手の体重を自分の両腕で支える物理的な親密性が、嗜好の中核となる。受け手側にとっては、自発的な動きの選択肢がほぼ消失することによる被支配的な没入感、および身体的な束縛の中で生じる感覚遮断的な集中が、独特の体験を提供する。

BDSM拘束プレイ緊縛等の隣接領域と異なるのは、道具(縄・手錠・拘束具)を用いず、行為者の身体だけで拘束を実現する点である。実行のためには行為者側にもある程度の体格・筋力差が前提となるため、フィクション内の体格差シチュエーション(背の高い相手、力の強い相手)と組み合わさる演出が定型化されている。

性表現における展開

AV では、「フルネルソン」「フルネルソン体位」を企画タイトルに冠する作品群が 2010 年代以降に量産されてきた。激しいピストン運動拘束系・鬼畜攻め系のサブジャンルと結びつき、視覚的なインパクトの強い演出としての地位を確立している。

エロ漫画エロゲ でも、変則体位の代表例としてフルネルソンは標準的なレパートリーに含まれる。隣接する変則体位として、駅弁寝駅弁背面騎乗位等とまとめて、立位 / 拘束 / 力業系のカテゴリーで扱われる。

身体的な負担(行為者の腕と背中、受け手の関節への負荷)が大きいため、長時間の維持には適さない。実演の場面では、短時間の象徴的な瞬間として組み込まれることが多い。実行強度の調整を誤ると肩関節の脱臼・神経損傷のリスクがあるため、医学的には注意喚起の対象となる体位群に位置づけられる。要出典

派生形態

ハーフネルソン体位

片腕だけで脇下から腕を通し、頭部の前で固定する派生型。フルネルソンより実行が容易で、長時間維持しやすい。

フルネルソン+立位

立った状態でフルネルソンを掛けながら立位後背位 を行う派生型。視覚的にもっとも力業的な演出となる。

フルネルソン+座位

座った状態(または椅子・ベッド上での座位)でフルネルソンを実行する派生型。受け手の体重を行為者の太ももで支える形で、長時間の維持が可能になる。

フルネルソン+空中(浮かせ)

受け手の足を地から離して、行為者の腕の力だけで身体を浮かせる派生型。駅弁 との複合形と理解される変則型。実行難易度は最も高い。

関連項目

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参考文献

  1. Brenda Love 『Encyclopedia of Unusual Sex Practices』 Greenwich Editions (1992)
  2. Jay Wiseman 『BDSM Encyclopedia』 Greenery Press (1996)
  3. 『アサシン全集』 現代風俗研究会 (2009) — 性的体位類型の現代日本資料

別名

  • フルネルソン
  • full nelson
  • 後ろ羽交い絞め体位
  • 拘束後背位
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