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エロ単語辞典

ソファに掛けた相手が、こちらの膝に頭を乗せて目を閉じている。「疲れたから、ちょっとだけ」と言って動かない。年齢は二歳下だが、態度はもっと幼い。「仕方ないなあ」と言いながら髪をなでると、満足そうに息を吐く。同じ部屋で過ごす一時間の中で、保護する側と保護される側、世話をする側と世話をされる側の役割が固定され、その配置の中で性愛関係に踏み込む。弟系は、当該の役割配置を物語的・性愛的中核に据えた男性キャラクター類型嗜好である。

弟系(おとうとけい)とは、年下・甘え気質・受け身的態度を特徴とする男性キャラクター類型を愛好する嗜好の総称である。年上女性または年上男性が保護的・指導的位置を取り、年下男性が被保護的・甘え手的位置を取る関係性配置を中核とする。女性向け作品・BL領域・乙女ゲーム領域で 2000 年代以降に独立した萌え属性として整備が進み、現在は女性向けエンタメ市場の安定的な属性枠を形成している。

概要

弟系の中核は、男性キャラクターが「保護される側」「甘える側」「主導されない側」の位置を取る関係性配置と、その配置における身体的・性格的特徴の総体的表現である。当該属性に分類される男性キャラクターは、典型的に(1) 主人公より年下に設定される、(2) 性格的に甘え気質・依存的・無邪気な傾向を持つ、(3) 身体的に華奢・小柄・少年的な造形を持つ、(4) 主人公に対して庇護を求める態度を取る、(5) 性的関係において主導権を取らない、または主導権を取らせてもらう、の五要素を典型的に共有する。

弟系男性キャラクターは、男性向け作品における・年下女性キャラクター類型と対称的位置にある。男性向け作品で年下女性キャラクターが「庇護される対象」として描かれるのと同様の構造で、女性向け作品では年下男性キャラクターが「庇護される対象」として描かれる。当該の対称性は、女性主人公の能動的・主導的位置取りを成立させ、女性向け作品における役割配分の柔軟性を支える。

成人向け女性向け作品では、当該属性は性的関係における主導権の女性側への移行と頻繁に組み合わされる。年上女性が年下男性をリードする「逆転」的構図、女性が積極的に性的接触を仕掛ける構図、男性側が受動的に応じる構図が、当該属性作品の典型場面を構成する。男性側の性的経験の浅さ・初心さ・戸惑いが演出され、当該演出が物語的劇性の中核を成す。

語源

「弟」は前近代日本語に存在する一般的親族呼称で、「兄弟」「弟妹」等の複合語を通じて運用されてきた。サブカル領域における「弟系」「弟キャラ」「弟属性」等の派生語は 2000 年代の少女漫画BL乙女ゲーム文脈で成立した。当該時期の女性向け作品群が年下男性キャラクター類型を主軸に据えた作品を量産し、当該類型を「弟系」として括る用語が確立した。

近接概念として「ショタ」(shota、少年愛・年少男性嗜好)が存在するが、両者は対象年齢層と物語類型で区別される。ショタが思春期前後の少年(概ね小学生から中学生年齢)を対象とするのに対し、弟系は中学生から大学生年齢の年下男性を対象とする。両者は連続的な属性スペクトルを構成し、作品によって境界が曖昧化する場合もある。

英語圏では little brother typeyounger boy 等の対応語が存在するが、日本のサブカル文脈における「弟系」は固有のキャラクター類型として認知され、英語コミュニティでも otouto として借用語化されている。

構造的特徴

弟系男性キャラクターの典型的造形は複数の身体的・性格的特徴の組み合わせで成立する。身体的には(1) 小柄・華奢、(2) 童顔、(3) 柔らかい髪質・明るい髪色、(4) 中性的な顔立ち、等の特徴が運用される。性格的には(1) 素直・無邪気、(2) 甘えん坊・依存的、(3) 主人公への憧憬・依存、(4) 性的経験の浅さ・初心さ、等の特徴が運用される。当該の身体的・性格的造形が組み合わされることで、「保護したくなる存在」としての視覚的・物語的記号が成立する。

物語類型としては、当該属性キャラクターが「成長していく存在」として描かれる場合が多い。物語の前半では未熟・依存的・受動的な弟系キャラクターとして登場し、主人公との関係性の深まりに伴い徐々に自立性・主導性を獲得していく成長物語が、当該属性作品の中核的物語類型を構成する。当該成長物語は姉属性お姉ちゃん属性等の年上女性属性との組み合わせで頻繁に運用される。

BL領域における当該属性の運用は、攻め・受けの役割配分と密接に結合する。弟系キャラクターは典型的に「受け」側に配置され、年上の「攻め」キャラクターから保護・指導・性的主導を受ける位置を占める。当該役割配分はBL作品における基本構造のひとつとして定型化しており、年齢差攻め受け・歳の差カップリングのサブジャンルを形成する。

派生・隣接概念

ショタは思春期前後の少年を対象とする属性で、弟系の隣接領域に位置する。両者の境界は曖昧で、作品によっては両属性が混在する場合もあるが、対象年齢層と性的描写の有無で典型的な区別が成立する。ショタが二次元作品に限定された属性であるのに対し、弟系は実写領域でも運用される。

年下系は年下キャラクター全般を対象とする属性で、女性キャラクターを中心とする。弟系は当該年下系の男性側対称物として位置付けられ、両者は性別を異にする並列的属性として機能する。

姉属性お姉ちゃん属性は年上女性属性で、弟系男性キャラクターと組み合わされる典型的な対称属性である。「年上のお姉さん」と「弟系の年下男性」の組み合わせは、女性向け恋愛作品における関係性配置の中核類型のひとつを形成する。

彼氏 ASMRシチュエーションボイス領域では、弟系男性キャラクターを主役とした音声作品が安定的に供給されている。「年下彼氏に甘えられる音声」「弟みたいな彼氏に頼られる音声」等の作品が、当該属性の音声的表現として流通している。

受容心理

弟系属性の文化的吸引力は、女性主人公が能動的・保護的位置を取ることを可能にする関係性配置に求められる。社会的・文化的に女性は受動的・被保護的位置を割り当てられがちな状況の中で、弟系男性キャラクターとの関係性は当該の役割配分を反転させる装置として機能する。当該反転は女性向け作品における能動性の表現として位置付けられ、ジャンルの安定的支持の心理的基盤を形成する。

社会学的には、当該属性の流行は女性の社会進出・経済的自立の進展と相関関係を持つ。経済的・社会的に主導的位置に立つ女性が、フィクション内で当該位置を性愛関係にも投影することが可能な物語類型として、弟系作品は機能している。一方で、当該属性は単なる役割反転ではなく、保護・指導の喜びそれ自体を主題化する点で、母性的快楽の物語的探求としても位置付けられる。

近年の女性向け同人音声市場では、当該属性に特化した作品の供給が継続的に拡大している。年下男性声優による「お姉さん、抱きしめてください」「俺、お姉さんが頼りなんです」等の台詞を中核とする作品群が、当該属性の音声的表現として安定的な需要を獲得している。男性向け作品においても、ヒロインに対して庇護的役割を取る男性主人公の対称物として、男性主人公自身が「弟系」的位置に置かれる作品が、ジャンル内のサブカテゴリとして発展している。

関連項目

最終更新

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参考文献

  1. オタク用語研究会 『オタク用語の基礎知識』 宝島社 (2014)
  2. 溝口彰子 『BL進化論』 太田出版 (2015)
  3. 斎藤環 『戦闘美少女の精神分析』 太田出版 (2000)
  4. 更科修一郎 『美少女ゲームの臨界点』 波状言論 (2004)

別名

  • 弟キャラ
  • 弟系男子
  • 年下男子
  • little brother type
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