長い黒髪を肩の前に流し、白いブラウスと膝丈のスカート。化粧は薄く、口紅は控えめなピンク。話し方は柔らかく、声を荒げる場面はない。電車の中では本を読み、休日は図書館で過ごす。性的経験は浅く、性的話題には頬を赤らめて目を伏せる。当該の装い・口調・行動様式の集合が、ある一つのキャラクター記号体系を構成する。「清純系」とは、当該記号体系を視覚的・行動的・心理的指標として組み合わせ、性的純粋性の演出を中核に据えた女性キャラクター類型嗜好である。
清純系(せいじゅんけい)とは、純情さ・控えめな性格・清楚な装い・性的経験の浅さといった視覚的・行動的・性格的記号を組み合わせて構成される女性キャラクター類型を愛好する嗜好の総称である。「清楚系」「清純派」「純情系」等の関連語と部分的に重なる範囲を持ち、サブカル領域・AV領域・芸能領域で広く運用されてきた属性カテゴリである。生物学的事実としての処女の概念と区別される、視覚的・記号論的な「清純さの演出」を中核とする点に固有の構造を持つ。
概要
清純系の中核は、性的純粋性が記号の集合として演出される構造にある。実際の性的経験の有無とは独立に、当該属性に分類されるキャラクターは「性的経験が浅い・性的話題に弱い・性的接触に不慣れである」という記号的属性を共有する。当該記号的属性は身体的造形・服装・髪型・話し方・行動様式・他者との接し方等の複数の指標の組み合わせで成立する。
視覚的記号としては、(1) 黒髪・暗色のロングヘア、(2) ブラウス・カーディガン・スカート等の保守的服装、(3) 控えめな化粧、(4) アクセサリー類の最小化、(5) 落ち着いた色調(白・パステル系)の支配が、当該属性の典型的造形を構成する。当該の視覚的記号は、社会的に「清楚」「上品」「お嬢様的」と認識される装いと連続性を持ち、視覚的識別性を獲得している。
行動的・性格的記号としては、(1) 控えめな話し方・小さな声量、(2) 性的話題への羞恥反応、(3) 性的経験の浅さの示唆、(4) 受動的・控えめな性格、(5) 知的・読書的趣味、(6) 規範的・倫理的態度、等が運用される。当該記号の集合体は、現代日本における「清楚な女性」の理念型を形成し、その理念型を性愛文脈に転用する形で清純系属性が成立する。
語源
「清純」(せいじゅん)は近代日本語の二字熟語で、「清く純粋な状態」を意味する。「清楚」(せいそ)は同義語的に運用される語で、「清く飾り気のない美しさ」を意味する。両語は明治期以降の文学・新聞・雑誌等で女性の理念型を表現する語彙として運用され、近代日本の女性像構築に組み込まれてきた。
サブカル領域における「清純系」「清楚系」「純情系」等の派生語は 1990 年代後半から 2000 年代の美少女ゲーム・AV文脈で属性タグとして整備された。AV市場では、女優の売り出し方の差別化軸として「清純派 AV 女優」のキャッチフレーズが 1980 年代から運用され、当該軸が他の女性向け属性体系と並列して機能している。「清純派」と「ギャル」「素人」「人妻」等の他属性の対比的配置が、AV ジャンル分類の基本軸を形成した。
英語圏では innocent type・pure type 等の対応語が存在するが、日本のサブカル・AV文脈における「清純系」は固有の記号体系として認知され、英語コミュニティでも seijun-kei として借用語化されている。
歴史
清純系属性の系譜は近代日本の女性像構築の歴史と並行する。明治期以降、近代教育制度・女性労働の進展と並行して、「良妻賢母」型の女性理念型が国家的に推奨され、当該理念型が「清純」「清楚」「貞淑」等の語彙で表現された。当該語彙は近代日本の女性表象の基本枠組みを形成し、サブカル領域の属性体系の歴史的背景を構成する。
直接的属性体系の成立は 1980 年代のAV業界における女優売り出し戦略に求められる。1985 年にデビューした小林ひとみ要出典等の「清純派 AV 女優」が、それまでのアダルト女優像と差別化された新しいキャッチフレーズで売り出され、当該カテゴリが商業的に独立した。1990 年代以降、AV業界は「清純派」「素人系」「人妻系」「ギャル系」等の属性軸での女優分類を制度化し、当該分類は現在まで業界の基本構造として運用されている。
並行して、美少女ゲーム領域でも 1990 年代後半から清純系ヒロインが定型属性として整備された。『To Heart』『Kanon』『AIR』等の作品における主要ヒロイン類型が、当該属性体系の核心的サンプルを提供した。当該作品群がギャルゲー領域における属性ベースのキャラクター設計を確立し、清純系はその中核軸のひとつとして位置付けられた。
2000 年代以降は、当該属性の派生・複合化が進展した。「清純系巨乳」「清純系ドジっ娘」「清純系お嬢様」等の複合属性が量産され、清純系は単独属性ではなく他属性との組み合わせを許容する基層的属性へと役割を変化させた。
派生・隣接概念
処女は生物学的・医学的事実としての性的経験の不在を指す概念で、清純系とは異なる範疇に属する。両者は重なる場合もあるが、清純系は記号的演出を中核とするのに対し、処女は事実的状態を中核とする点で根本的に異なる。清純系キャラクターが必ずしも処女である必要はなく、逆に処女キャラクターが必ずしも清純系の記号体系に従うとは限らない。
淫乱・ドスケベ系は清純系の対義属性として運用される。両者の対比的配置は、女性キャラクターの性的態度の二極構造を形成し、属性ベースのキャラクター設計の基本軸を構成する。「清純系の見た目で実は淫乱」「ドスケベに見せて実は処女」等のギャップ的設定は、両軸の対比を物語的劇性として運用する典型的手法である。
制服・ブレザー制服は清純系記号体系と高い親和性を持つ。学校制服は社会的に「未熟・清純・規範的」な記号として機能し、清純系キャラクターの装いとして頻繁に運用される。同様にセーラー服も清純系の視覚的記号として古典的に機能してきた。
受容心理
清純系属性の文化的吸引力は、性的純粋性の演出が引き起こす「越境性」の物語的劇性に求められる。「清純な相手と性的関係に踏み込む」物語構造は、純粋な状態が破壊・転換される瞬間の劇性を最大化する装置として機能する。当該の越境性は処女概念とも重なるが、清純系は記号体系の集合として記号的次元で成立する点で独立した心理的吸引力を持つ。
社会学的には、当該属性は近代以降の女性像構築の延長線上に位置し、「清楚な女性」の理念型を性愛文脈に転用する文化的装置として機能する。フェミニズム的視点からは、当該属性が女性の主体的性的態度を抑制する規範的装置として作用する側面が指摘されることもあるが、サブカル領域においては当該属性は他属性との対比的配置の一極として相対化されており、絶対的規範としては運用されていない。
近年のAV業界では、当該属性の運用形態に変化が観察される。「清純派からの脱皮」「清純派デビューからの淫乱化」等の物語的展開が女優のキャリア設計の中核軸として運用され、清純系は固定的属性ではなく属性転換の起点として機能する場合が増加している。サブカル領域においても、清純系属性は単独属性ではなく他属性との複合的運用が中心となっており、純粋な単独属性としての運用は相対的に縮小している。
関連項目
最終更新
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参考文献
- 『オタク用語の基礎知識』 宝島社 (2014)
- 『戦闘美少女の精神分析』 太田出版 (2000)
- 『美少女ゲームの臨界点』 波状言論 (2004)
- 『セクシュアリティの心理学』 有斐閣 (2001)
別名
- 清純派
- 純情系
- 純真系
- innocent type
- seijun-kei