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中世ヨーロッパの伝説では、十字軍の貴族が出征前に妻に取り付けた金属製の枷として描かれてきた。歴史学的にはその伝説の大半が後世の創作だが、装置そのものは現在も生産されており、形態を変えながらBDSM コミュニティの装備として広く使われている。それが貞操帯(チャスティティデバイス)である。

貞操帯(ていそうたい、英 chastity belt / chastity device)とは、装着者の性器接触・自慰・性交を物理的に制限する拘束具の総称である。本項では中世起源説の歴史学的検討、近代以降の発明と医療器具としての利用、現代のBDSM コミュニティでのチャスティティデバイスの位置づけ、男性向け製品の普及、を扱う。

概要

貞操帯は、(1) 装着者の性器を金属・プラスチック・シリコン製の構造体で覆う、(2) 鍵やロック機構で外部からの解除を要する、(3) 装着者は自力で外せない、という構造を持つ拘束具である。装着期間中は性器への直接接触・勃起 ・自慰が物理的に困難または不可能となる。

BDSM 文脈では、装着者は主に「服従側(sub)」となり、解錠の権限は支配側(Dom)が握る。これにより、装着者の性的活動を支配側がコントロールする継続的な権力関係が形成される。

中世起源説の検討

「貞操帯は中世ヨーロッパで十字軍の妻に強制された」とする説は、歴史学的に大幅な脚色を含むことが研究で示されている。Albrecht Classen らの研究によれば、(1) 中世期の文献に登場する「貞操帯」の多くは寓話・諷刺の文脈にあり、実在装置の記述ではない、(2) 博物館に展示されてきた「中世の貞操帯」の多くは 19 世紀以降の偽作またはレプリカである、(3) 衛生・実用性の観点から長期装着は中世技術では不可能だった、と論じられる。

伝説の流布は 18 世紀から 19 世紀のロマン主義・歴史小説の創作と、19 世紀以降の博物館・好奇趣味的展示物の影響が大きい。実在の貞操帯のうち最古とされる現存物は、19 世紀後半に「自慰防止」の医療器具として製造された製品群である。

近代以降

19 世紀後半から 20 世紀前半、欧米では「自慰=精神疾患・道徳的問題」とする自慰害悪説 の医学的言説が広まり、自慰防止具・勃起 防止具が商品化された。子供向けの夜間装着具、男性向けの陰茎ケージなどが当時の医学雑誌に広告されている。

第二次世界大戦後、自慰害悪説が医学的に否定された後も、これらの装置はBDSMフェティッシュ コミュニティで愛好者を獲得し、20 世紀後半以降は男性 M 向けの中核装備として再定着した。

現代の BDSM 利用

現代のBDSM 領域で流通する貞操帯(チャスティティデバイス)の主流形態は、(1) 男性向け陰茎ケージ(CB-6000・Holy Trainer・各種金属ケージ)、(2) 女性向け股付き構造体、(3) 短期装着用シリコン製、(4) 長期装着可能な金属製、に分類される。

男性向けは特に普及しており、装着期間は数時間から数か月までさまざまな運用がある。長期装着 は、(1) 衛生(尿排出経路の確保・洗浄)、(2) 緊急解除の手段確保、(3) 装着者の心身状態のモニタリング、を前提とした慎重な実践が必要となる要出典

受容の構造

貞操帯プレイの心理的核心は、「性的衝動を他者の支配下に置く」関係性の構築にある。装着者は性的活動を自力で開始できず、解錠を支配側に求める従属的立場に置かれる。この継続的な「お預け状態」が、性的緊張の蓄積と支配側への依存の双方を強化する。

長距離・遠隔のパートナーとの関係維持装置としても用いられ、装着者が日常生活を送りながら、遠隔地の支配側に「装着の継続報告」「解錠の請願」を行うオンライン・チャスティティ文化がBDSM コミュニティで成立している要出典

関連項目

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参考文献

  1. ジャイ・ワイズマン 『BDSMハンドブック』 イースト・プレス (2012)
  2. ジャック・ル=ゴフ 『中世の性愛』 白水社 (1994)
  3. Albrecht Classen 『The Chastity Belt: Myth and Reality』 Palgrave Macmillan (2007)

別名

  • 貞操帯
  • chastity belt
  • chastity device
  • 男性貞操帯
  • 操帯
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