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銀座の高級寿司屋、初対面の二人が向き合う席。男は大手企業の代表取締役、女は二十代後半の元キャバクラ嬢。エージェントが事前に整えた契約書は二枚、月の手当三十万円・週一の食事と月二回の宿泊を含む。三回の食事を経て関係が成立すれば、エージェントには男側から成婚料に相当する三百万円が振り込まれる。これが「愛人派遣」業態の標準的な発端となる商談である。

愛人派遣(あいじんはけん)とは、エージェントが富裕層男性に対し継続的な交際相手となる女性を紹介し、月単位の手当を伴う愛人関係を仲介・管理する業態の総称である。「愛人クラブ」「愛人紹介所」とも呼ばれる。戦後の旦那制度・水揚げ制度の名残を引き継ぎつつ、現代の交際クラブパパ活の最上位帯を架橋する位置に置かれる。

業態の構造

エージェント(運営会社)は二系統の登録を受け付ける。男性側は経営者・医師・弁護士・地主など年収数千万円以上を想定したスクリーニングを通過する必要があり、入会金が 50 万円から 300 万円、月会費が数万円という料金設計が一般的とされる要出典。女性側は容姿・教養・職業を細かく登録し、希望する手当の最低額(月 30 万〜100 万円が標準帯)を申告する。

仲介の流れは、男性が女性プロフィールを閲覧し、面会希望を出す。エージェントが日程と場所を調整し、初顔合わせは高級レストランで実施。三回程度の食事面会を経て双方合意すれば「契約成立」となり、男性からエージェントに成立報酬(月手当の三〜十か月分)が支払われる。以降は当事者間の関係となり、エージェントは表向き介在しない。

法的な位置づけはきわめて微妙である。表面上は「結婚相談所の延長」「マッチング仲介」を装っており、料金体系も入会金・成立料の形式を取る。実態として月手当に肉体関係が前提として組み込まれていれば売春防止法第 6 条「売春の周旋」に問われうるが、エージェントは「双方の自由意思による交際」と整理し、性的関係を契約書に書かないことで規制をかわしている。

歴史

戦前の日本には「囲い」「お妾さん」「二号さん」と呼ばれる、富裕層男性が複数の女性を経済的に支える慣行が広く存在した。芸者を「水揚げ」して旦那衆が囲う制度はその典型である。戦後の売春防止法施行と高度経済成長で、こうした旦那制度は表向き縮小したが、実態は地下化して継続した。

1980 年代のバブル期、銀座・赤坂の高級クラブを介した愛人斡旋が活発化する。クラブのママが優良顧客と若いホステスを引き合わせ、月手当の交渉を仲介する非公式システムが定着した。これが現代型の愛人派遣業の母体となる。1990 年代以降、専業のエージェント会社が登場し、事務所を構えて表業態として営業する「愛人クラブ」が東京・大阪・福岡に整備される。

2010 年代以降はパパ活の大衆化と交際クラブの中間帯成立で、愛人派遣業態は最上位富裕層に特化する形で残った。月手当 100 万円以上の上位帯、複数年契約を扱うハイエンドエージェントが、表に出ない形で営業を続けている。

受容と批判

利用者男性側の動機は、結婚関係の維持と性的・情緒的補完の両立である。家庭を壊さず、社外秘の関係として継続できる女性を求める層が中心顧客となる。女性側の動機は、安定した手当と自由時間、店舗系業態の労働強度の回避に集約される。月数回の食事と宿泊で月収数十万円が確保できるため、本業との両立が容易となる。

批判的な視点では、性売買の高級版・契約結婚の代替であるという指摘がある。経済格差が個人関係に直接持ち込まれ、女性側の自己決定権の名目で実質的な搾取が成立しやすい構造が問題視される。一方で当事者の合意の上の取引として、フェミニズム内部でも擁護論と批判論が分裂している。要出典

関連項目

最終更新

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参考文献

  1. 中村淳彦 『性風俗産業の社会学』 勁草書房 (2017)
  2. 中村淳彦 『現代風俗学入門』 幻冬舎新書 (2019)
  3. 『売春防止法』 日本国法令 (1956)

別名

  • 愛人クラブ
  • 愛人紹介所
  • mistress agency
  • kept woman service
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