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熱海の老舗旅館の大広間、座卓を囲むスーツ姿の中年男性二十名、ビールが回り浴衣の女性十人が次々と入ってくる。お酌、揉み、カラオケ、写真撮影、二時間で全員ベロベロに酔わせる。会計のあとは「お部屋まで送ってさしあげる」コースの選択肢が出され、宴の続きは個室か二次会の貸切ラウンジへ移る。これが日本の「コンパニオン」業態の典型的な夕方から深夜の時間軸である。

コンパニオンとは、宴会場や旅館・温泉宿に派遣されて酒席の接待を行う女性従事者、またはその業態の総称である。「宴会コンパニオン」「温泉コンパニオン」とも呼ばれる。社員旅行・町内会の慰安・大型会合といった「集団宴会」の華として戦後から定着し、特に温泉地では添い寝・夜伽の有無で料金が分岐するグレーゾーン業態として継続してきた。

業態の構造

業態の基本形は「ヘルパー業」または「派遣サービス業」である。コンパニオン会社が女性を集め、旅館・宴会場・ホテルからの依頼に応じて二時間から三時間の枠で派遣する。料金は一人 1.5 万円から 3 万円程度で、宴会の華やかさ要員として人数比 2 対 1(客 2 名に対しコンパニオン 1 名)が標準。基本サービスはお酌・話し相手・カラオケ参加・写真撮影に限定される。

問題は「ピンク系」「過激系」と呼ばれる別ライン業態の存在である。基本料金に加えて「布団敷き」「添い寝」「夜伽」のオプション料金が設定され、客と同室で就寝するパッケージが含まれる場合がある。これは法的には売春防止法第 3 条違反に直結するため、表向きは「同室の朝食付き」等の名目でぼかされる。地域によってはこの過激系がコンパニオン業の主流となっている温泉地もあるとされる要出典

歴史

戦後の温泉観光ブームと社員旅行文化の興隆が、コンパニオン業を生んだ最大の背景である。1950〜60 年代、企業の慰安旅行が「日本型の福利厚生」として制度化され、宴会の場を盛り上げる女性需要が一斉に膨らんだ。当初は旅館の女中が兼任していた接待が、次第に外部から派遣される専業のコンパニオンへと分業化される。

1970 年代の全盛期には、熱海・伊東・鬼怒川・草津・別府といった温泉地にコンパニオン会社が密集し、日本各地から女性を出稼ぎ的に集める構造が確立した。1980 年代のバブル期は宴席接待文化の頂点で、銀座のクラブ文化と並行して温泉コンパニオンも黄金期を迎える。

転機は 1990 年代後半である。バブル崩壊で社員旅行の予算が半減し、続いて 2000 年代の社内コンプライアンス強化で「コンパニオンを呼ぶ宴会」自体が問題視される企業が増えた。2010 年代以降は MeToo・セクハラ意識の高まりで、上場企業の慰安旅行でコンパニオンを呼ぶ慣行はほぼ消滅する。残存しているのは中小企業・町内会・地方建設業界・趣味サークルといった、固有のおじさんカルチャーが残る領域である。

派生業態

ノーパン宴会」「セクシーコンパニオン」「過激コンパニオン」「ピンクコンパニオン」と呼ばれる一群は、衣装の露出度や同席中の身体接触の許容度で差別化されている。最も穏当な「正統派」は浴衣・着物姿で接客のみを担当し、「セクシー」はミニドレス・ボディコン姿、「ピンク」は下着姿または上半身露出での接客と、料金が階段状に上がる。

キャバクラとの違いは、店舗の有無である。キャバクラは固定店舗を持つ接待飲食等営業の届出業態であり、コンパニオンは派遣業として店舗を持たない。これにより届出区分・営業時間規制・面積要件などが大きく異なる。一方宴会場のキャバ嬢派遣との境界は曖昧で、近年は両者を兼業する女性も多い。要出典

関連項目

最終更新

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参考文献

  1. 中村淳彦 『性風俗産業の社会学』 勁草書房 (2017)
  2. 『温泉文化と接客女性』 週刊誌・地方紙取材記事 (1990-2010)
  3. 『風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律』 日本国法令 (1985)

別名

  • 宴会コンパニオン
  • 温泉コンパニオン
  • banquet companion
  • companion service
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