バイブレーター(振動器具)の現代的な意味での歴史は、19世紀末〜20世紀初頭の医療器具の産業化と密接に結びついている。現在では性玩具の代名詞的な製品カテゴリとなっているが、その起源については医学史・フェミニズム理論の観点から様々な解釈が存在する。
「医療用バイブレーター」起源説
バイブレーターの起源として広く語られる説は、19世紀の「ヒステリー治療のための骨盤マッサージ」に遡るというものである。ヴィクトリア朝時代の医師が女性患者の「ヒステリー」治療のために外性器のマッサージを行い、そのための電動器具として初期のバイブレーターが開発されたという説である。
この説は、著作「ヒステリー治療」(Rachel Maines, 1999)で詳しく論じられ、広く流布した。ただし近年の歴史研究ではこの説の証拠基盤が弱いとする批判が提示されており、当時の医師が日常的に骨盤マッサージを行っていたという主張については史料の解釈に疑問が呈されている。
確かに言えることは、19世紀末〜20世紀初頭に電動マッサージ機器が「医療用」「衛生用」として家庭向けに販売されており、これらが性的にも使用されたことである。
「魔法の杖」の普及
現代のバイブレーター文化において象徴的な存在は、1968年に日立が発売した業務用電動マッサージ器「ヒタチ・マジックワンド」である。元来は筋肉疲労解消を目的とした医療・業務用製品だったが、1970年代のアメリカでフェミニスト性教育者(特にBetty Dodsonら)が女性の性的自立・マスターベーション推奨の文脈でその性的使用を公に推奨したことで、「性玩具」としての地位を獲得した。
専用性玩具としての発展
1970〜80年代に、医療用・業務用とは別に性的使用を明示した専用のバイブレーターが登場し始めた。当初は「マッサージ用」という表示で店頭販売された。同時期にアメリカではアダルトグッズ専門店(ニューヨークのEve’s Gardenなど)が開業し、女性向けの性玩具販売が始まった。
日本では1970年代頃から国産の電動バイブが流通し始め、1980〜90年代のアダルトグッズ産業の発展とともに「ローター」「ローター型バイブ」などの形状バリエーションが確立した。
デザイン革命とラビット型
1990年代に、日本メーカーが開発した「ラビット型バイブレーター」が欧米市場で大ヒットした。膣内刺激とクリトリス同時刺激を実現するデザインは革新的であり、アメリカのドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」での言及によって世界的に知名度を高めた。
2000年代以降はシリコン素材の普及・USBチャージャー搭載・スマートフォン連携・静音設計など技術革新が相次ぎ、バイブレーターはかつての「隠す性玩具」から「インテリアにもなる洗練された製品」へと文化的位置づけが変化してきた。
最終更新
別名
- バイブの歴史
- 電動バイブ歴史
- 振動器具の歴史