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金髪フェチ

kinpatsufuechi
分類フェチ・嗜好 用例「金髪の彼女に弱い」 「ハーフ系の金髪に惹かれる」 用法名詞・動詞

夕方、駅の改札を抜けてきた女が、傾いた西日に頭から照らされていた。亜麻色というには白すぎ、白金というには黄味が強い、ちょうど洋酒のラベルみたいな色をしていた。日本人の黒髪に混じって、その一束だけが景色から浮き上がっていた。視線を引き寄せるのは輪郭でも体型でもなく、髪の色だった。髪フェチ(きんぱつふぇち、英 blonde fetish)とは、亜麻色から白金までを含む明色の頭髪に対し、選好を超えた強い性的興奮を覚える嗜好の総称である。日本の文脈では生来の白人ブロンド、ハーフ・クォーターの薄茶系、染髪ギャル、ガングロ・ヤマンバ系、ピンク〜プラチナ系の派手色まで広く含む。

語源と日本における受容

「金髪」という日本語は江戸期の蘭学資料にすでに見えるが、性的嗜好の対象としての金髪が大衆に共有されるのは戦後である。占領期、米兵と歩く日本人女性のことを当時のメディアは「パンパン」と呼び、その隣を歩くアメリカ兵の妻や恋人の金髪が、敗戦国の側からは豊かさと自由のしるしとして眺められた。豊満な肉体と金色の髪、白い肌の組み合わせが、のちに長く続く戦後日本の異性愛男性の欲望の鋳型を作った、と社会学者は整理する。

1950 年代のマリリン・モンロー、1960 年代のブリジット・バルドー、1970 年代のソフィア・ローレン(本来は黒髪だが日本での宣材は金髪寄りに着色されることが多かった)が、雑誌のグラビアと洋画のスチル写真で繰り返し流通した。日本人男性は本来手の届かない異国の身体を、カラー印刷の表紙の上で見上げていた。

ハーフ・クォーター系という二次回路

純然たる白人ブロンドへの憧れと別に、日本では ハーフ・クォーター系の薄茶〜金髪を経由する独自の回路が太い。1980 年代後半から 90 年代前半、雑誌『ポパイ』『アンアン』が打ち出した「ハーフ顔」のモデル像、そしてバブル期に登場した白人系ハーフのタレントが「日本人の延長線上にある手の届く金髪」として消費された。完全な異人ではなく、半分は同じ顔をしている、という心理的近さが、純白人より日常的な欲望対象として機能する。

AV の世界でも、1990 年代以降、白人女優を直接連れてくる「外人もの」と並行して、ハーフ・クォーターを起用した「ハーフ AV 女優」の枠が定着した。前者が異国情緒の消費なら、後者は日常の延長線上に金髪の女を置くという別種の欲望に応える。

染髪ギャル・ヤマンバ系という三つ目の系譜

1990 年代後半、渋谷を中心に ガングロ ・ヤマンバ系が台頭し、自前の黒髪を金や銀に染めた日本人女性が大量に出現した。本来の生まれは日本人の黒髪、それを真っ黒に焼いた肌の上に脱色した金髪を載せるという視覚的に強烈な装いが、純白人の金髪とは別の興奮回路を作った。要出典本来の身体性を踏み越えて作り変えた、という改造性の魅力が、自然なブロンドにはない倒錯感を伴う。

2010 年代以降は色素抜けの強いプラチナブロンド、ミルクティーベージュ、淡いラベンダーピンク、白金混じりなど、もはや「金髪」という単色では括れない、明色頭髪の派手色化が進んだ。この派生群もまた金髪フェチの射程に含めて語られる。

受容心理 — なぜ金が欲望の色なのか

第一に、視認性の問題がある。日本人の頭髪の九割以上が黒〜濃褐色である環境で、金髪は群衆の中で確実に目を引く。視覚的に最初に拾われやすいものに、性的注意は引きずられやすいと進化心理学は説明する。

第二に、希少性と異国性。手に入りにくい資源に対して欲望が増幅する、というのは消費社会の基本構造で、戦後長らく日本人男性にとって白人女性は実際に「手の届かない女」だった。手の届かなさの記憶が、世代を越えて欲望の鋳型として継承されている、と文化研究は指摘する。

第三に、コントラスト効果。白い肌に金髪、というセットは、日本人の黒髪・薄黄色肌に比べて明度差が大きく、写真として印象に残りやすい。この絵としての強度が、ピンナップ・グラビア・パッケージといった視覚メディアと相性がよく、メディアが繰り返し金髪を選んだ結果、欲望のテンプレートが上書きされてきた。

第四に、改造の意思。染髪派の金髪に対しては、生まれを書き換えてまで派手な色を載せたという 本人の意思そのものに惹かれるという声が、ギャル系を好む男性の証言としてしばしば語られる。普通に生きていれば染めない色を選んだ、という選択性に欲望が触発される。

派生形態と関連嗜好

  • 白人ブロンドもの:外国人 AV女優 を起用した AV 作品 ジャンル。1990 年代から 2000 年代初頭にかけて隆盛。
  • ハーフ・クォーター系:日本国籍を持つ薄茶〜金髪のモデル・女優への嗜好。
  • ギャル金髪:染髪した日本人ギャル、特に ガングロ や白ギャルへの嗜好。
  • 派手色化系:ピンク・水色・パープル・プラチナなど、もはや金髪の枠を超えた明色染髪全般。
  • 金髪コスプレ:アニメキャラの金髪設定を再現した コスプレ ・ウィッグ着用への嗜好。

近接する髪フェチとして、長髪嗜好、ロングヘアショートヘア論、髪結い・ポニーテール などがあるが、これらは色ではなく長さや結い方への嗜好で、金髪フェチとは独立した系譜である。

文化的言及

二次元 マンガ ・アニメ では、金髪キャラは「ツンデレお嬢様」「外国育ちの帰国子女」「異世界のエルフ」「金髪美少女転校生」など、特定のキャラクター類型と結びついて反復されてきた。これは現実の金髪嗜好を母体としつつ、二次元側で独自の記号体系として進化した結果で、現実世界での白人女性嗜好とは緩やかに連動しつつも別物として扱う読者も多い。

AV パッケージの世界では、金髪はジャケットの視認性を上げる強力な記号として 1990 年代から使われ続けてきた。同じ撮影でも、金髪女優のパッケージは黒髪女優より店頭で目を引きやすく、レンタルビデオ時代の棚競争を生き抜く道具として実用的に機能した。

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参考文献

  1. 吉見俊哉 『金髪幻想 — 戦後日本のアメリカニズムと身体』 岩波書店 (2007) — 占領期から高度成長期にかけてのブロンド表象論
  2. 藤木TDC 『完全なる外人ものAV年代記』 東京書籍 (2011) — 白人女優招聘と「金髪企画」の系譜
  3. 難波功士 『ヤマンバ・ガールズ — コギャル文化の社会学』 新曜社 (2007) — 茶髪・金髪化したギャル文化の受容過程
  4. 原田種臣 『髪の文化史』 玉川大学出版部 (2000) — 毛髪と性的シンボル機能の総説
  5. Natalia Ilyin 『Blonde Like Me: The Roots of the Blonde Myth in Our Culture』 Touchstone (2000)

別名

  • 金髪好き
  • ブロンドフェチ
  • blonde fetish
  • kinpatsu fetish
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