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ラテックスより一段階厚い、重みのある黒い面。装着すればに重さが残り、内側は熱と湿気で蒸れ、自分のの匂いと素材本来のゴム臭が混ざり合う。光は鈍く跳ね返り、表面はマットに沈む。動くとスーツが軋む音がする。ラバーは「光沢の素材」というより「重量と密閉の素材」で、装着者の身体を一段階遠い世界へ引き離す力を持つ。20 世紀英国のSM系コミュニティはこの重く厚い素材を選び、軽量で見栄えの良いラテックスとは別系統のフェティッシュ文化を磨いてきた。ラバーフェチ(英: rubber fetish)とは、厚手のラバー素材で身体を覆うこと、その重量・密閉・匂いを性的興奮の対象とする嗜好の総称である。

語源と定義

英語 rubber は天然ゴムを指す広義語で、フェティッシュ文化では薄手の天然ゴム=ラテックス、厚手の天然ゴムまたは合成ゴム=ラバーとして区別される。ラバー衣装の標準厚は 0.6-1.5 mm 以上で、3 mm を超える「ヘビーラバー」も愛好家向けに製造される。

ラバーには以下の系統がある:1) 工業用ゴムシート系(マッキントッシュ・コート風)、2) ダイビングスーツ系(ネオプレン)、3) ガスマスク・防護服系(化学防護衣)、4) 専門製造のフェティッシュ・ラバー製品。

歴史

ラバーを性的衣装として扱う文化は、19 世紀末の英国に既にその痕跡が見られる。当時の防水コート(マッキントッシュ・レインコート)が「マック」として愛好家コミュニティの隠語となり、20 世紀初頭の英国フェティッシュ・サブカルチャーで「マッキントッシュ・フェチ」が独立した嗜好として記録されている。

1950-60 年代、英国のラテックス・フェティッシュ文化と並行して、より厚手のラバー素材を好む派が分化した。ジョン・サトクリフの「AtomAge」もラテックスとラバー両方を扱ったが、より重い素材を扱う専門ブランド(House of Harlot ほか)も後年に登場した。

英国のSM系コミュニティでは「ヘビーラバー」と呼ばれる極厚素材+多重装着+ガスマスク+チューブ呼吸の様式が独立サブジャンルとして成立し、商業流通とは別の自家製作・小規模工房中心の文化を形成している。

日本ではラバー文化はラテックス文化の延長として 2000 年代以降に流入し、英国・ドイツ製のヘビーラバー製品の輸入と、国内向けにはSMレーベルの作品素材としての使用が中心となっている。

嗜好の構造

ラバーがラテックスと異なる嗜好的位置を占める要素は四点ある。第一に「重量感」で、装着するだけで肩・に物理的負荷がかかり、装着者の動作が制限される。第二に「密閉性」で、厚手のためほぼ完全に外気を遮断し、内部に熱と湿気が籠もる。第三に「マット質感」で、光沢ではなく重く沈む黒の表面が、装着者を「物体化」する視覚効果を強化する。第四に「呼吸制限」との接続で、ガスマスク・チューブ呼吸器具と組み合わせる「ヘビーラバー」様式がSM系の重度実践と直結する。

受け手の心理はラテックス以上に「物体化」「拘束」志向が強く、装着者を見るより装着者になることに重きを置く愛好家比率が高い傾向にある。「自己物体化」と呼ばれる、自分自身を物質に変換する経験への嗜好がコミュニティの中核を占める。

派生形態

  • ライトラバー:0.6-0.8 mm、日常衣装寄り
  • ミディアムラバー:1.0-1.5 mm、標準フェチ衣装
  • ヘビーラバー:2.0 mm 以上、重度愛好家向け
  • ガスマスク+ラバースーツ:呼吸器系統
  • ラバー・ボンデージ・スーツ:拘束機能内蔵
  • ラバー・ホスピタル衣装:看護・医療系統
  • ラバー・サック:全身を一枚の袋で密封
  • ヴァキューム・ラバー・ベッド:厚手版の真空密封
  • マッキントッシュ・コート:伝統英国系統

文化的言及

ラバー文化は英国・ドイツに濃厚な拠点を持ち、ロンドンの「Mr. Sub」「Skin Two」「Recon」、ベルリンの「Folsom Europe」など愛好家向けイベントが定期的に開催されている。これらのイベントは商業SMシーンの中核行事でもあり、ラバー文化は欧州 BDSM コミュニティの基層を成している。

英語圏では「rubberist」(ラバー愛好家)という独立した自己同定語が存在し、宗教的儀礼に近い装着・脱着のプロセスを記述した愛好家文献が多数刊行されている。日本国内でのラバー文化は規模が小さく、専門店も限られるが、コアな愛好家層が継続的に欧州製品を輸入して活動している。商業 AV では純粋なラバー作品はほぼ存在せず、SM系作品の中で道具として登場する形態がほとんどである。

関連項目

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参考文献

  1. Janne Vibaek 『Rubber: Fashion, Identity and Style』 Bloomsbury (2018)
  2. Valerie Steele 『Fetish: Fashion, Sex and Power』 Oxford University Press (1996)
  3. Gloria G. Brame, William D. Brame, Jon Jacobs 『Different Loving』 Villard Books (1993) — BDSM のコミュニティ調査
  4. 『ジャンル別 AV 大全』 コアマガジン (2014)

別名

  • ラバー
  • rubber fetish
  • rubber
  • ラバースーツ
  • ヘビーラバー
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