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2000年代のエロ文化史

nisennendainoerobunkashi

2003 年、新宿駅前で高校生がガラケーを片手に立っている。画面には「i モード」のロゴ、その下に「出会い系メル友募集」の文字。同時刻、別の客が大久保の漫画喫茶でブロードバンド回線につながった PC を前に、無料動画サイトの広告をクリックする。さらに同時刻、池袋のレンタルビデオ店ではサークルケーKを兼ねたコンビニ系列の品揃えに、最新の DVD パッケージが平積みになっている。2000 年代のエロは、ガラケー・PC・実店舗の三線が並走する独特の生態系で、最盛期と転換期を同時に経験する一時代を構成していた。

2000 年代のエロ文化史(にせんねんだいのえろぶんかし)とは、西暦 2000 年から 2009 年にかけての日本における性風俗・エロメディア・性をめぐる消費文化の動向を指す。ガラケー出会い系の隆盛、AV 産業の量的拡大、ブロードバンド普及によるネットエロの爆発的成長、DVD から動画配信への移行期など、複数の構造変化が同時並行で進行した時代である。本項ではメディア環境、AV 産業、出会い系・援助交際、規制動向を扱う。

ガラケーと出会い系

2000 年代前半は、NTT ドコモの「i モード」(1999 年開始)を筆頭とする携帯インターネットサービスの普及期で、若年層を中心に「出会い系サイト」が爆発的に流行した。フィーチャーフォン(俗称ガラケー)から手軽にアクセスできる出会い系サイトは、最盛期には全国規模で数千を超え、月額課金・1 通あたり課金などの多様な料金モデルで運営された。

需要層は男女ともに広範で、独身者・既婚者・学生・主婦などが入り乱れた。1990 年代後半からの「援助交際」(援交)という社会現象は、出会い系の登場でさらに匿名化・大規模化し、女子高校生・女子大学生と社会人男性の金銭を介した接触が、深夜のカラオケボックス・ラブホテル・出会い系カフェなどで日常的に発生した。

2000 年代前半の出会い系犯罪の急増(性犯罪・恐喝・自殺・児童買春など)を受け、2003 年に「出会い系サイト規制法」が成立し、児童保護を主眼とする規制枠組が整備された。同法は出会い系サイト事業者の届出義務、利用者年齢確認義務、違法書込みの削除義務などを規定し、業界の構造を大きく変容させた。

AV 産業の量的拡大

2000 年代は日本の AV 産業の量的最盛期である。年間製作本数はピーク時で 1 万 5 千本前後、市場規模は 5,000 億円超(関連メディアを含む)とも推計された要出典。VHS から DVD への移行(1990 年代末-2003 年頃に完了)により、製作・流通コストが大幅に低下し、新規参入メーカーが急増した。

ムーディーズ(2000 創業)、プレステージ(2002 創業)、S1 NO.1 STYLE(2004 創業)、kawaii*(2006 創業)などの新興大手メーカーが、宣伝の派手さ・専属女優のキャラクター演出・パッケージのアイドル化などで業界を再編した。大手 AV メーカーの専属女優として登場した蒼井そら(2002 デビュー)、麻美ゆま(2005 デビュー)、夏目ナナ、長瀬愛、吉沢明歩、明日花キララなど、後の「カリスマ女優」群はこの時期に活躍を本格化した。

2000 年代後半から、無料動画サイトの台頭と並行して AV 産業の構造は徐々に揺らぎ始めた。レンタル店の閉店・縮小、動画配信(DMM、FANZA の前身)への移行、2010 年代半ばの市場縮小へと連なる転換点が、2000 年代末に既に観察されていた。

ブロードバンド普及とネットエロ

2001 年の Yahoo! BB を皮切りに、ADSL・光ファイバーの普及で家庭のブロードバンド接続が一般化した。これに伴い PC 経由のアダルト動画視聴・画像閲覧が爆発的に普及し、雑誌・VHS・DVD の販売モデルに代わる新たな消費経路が確立した。

DMM(1999 創業、2018 年に FANZA に分割)、エキサイト・gooの大人向けコンテンツ、xvideos・YouPorn(米国系、2007 年前後にサービス開始)などが、有料・無料両モデルでアダルト動画市場を構成した。同時期、画像掲示板(2ちゃんねる、ふたば☆ちゃんねる)・個人ブログ・mixi などの SNS で、エロ画像・体験談・素人投稿が活発に流通する独特の生態系も形成された。

携帯電話のフルブラウザ機能・スマートフォン(2008 年 iPhone 日本上陸)の登場により、2000 年代末にはモバイル動画視聴も実用化した。2010 年代の「スマホ × ネットエロ」時代の基盤は、2000 年代を通じて整備されていた。

援助交際とその社会化

1990 年代後半に社会問題として登場した「援助交際」(援交)は、2000 年代を通じて出会い系の普及とともに大衆化した。「ブルセラ」(使用済み下着・制服の売買)、「テレクラ」(電話を介した出会い)、「援交カフェ」「JK ビジネス」など、関連業態が並列的に展開した。

2004 年、警察庁の児童買春の検挙人員は約 720 人、検挙件数は約 1,800 件に達し、社会問題として政治課題化した要出典。1999 年成立の児童買春・児童ポルノ法、2003 年の出会い系規制法の延長として、2000 年代後半は児童保護法制の継続的強化期となった。

エロゲ・同人と一般化

2000 年代は、エロゲ(成人向けパソコンゲーム)・同人誌同人ゲームが一般文化と急速に交差した時代でもある。『君が望む永遠』(2001)、『Fate/stay night』(2004)、『東方 Project』シリーズの興隆など、エロゲ・同人発の作品が一般文化に与える影響が拡大した。コミックマーケット参加者数は 2000 年の約 33 万人から 2009 年の約 56 万人へと激増し、同人即売会経由の文化流通が量的にも質的にも飛躍した。

関連項目

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参考文献

  1. 藤代裕之 『出会い系サイト』 光文社 (2009)
  2. 中村淳彦 『AV帝国の興亡』 講談社 (2018)
  3. 鈴木涼美 『イメクラ・SM嬢が語る性』 扶桑社 (2014)
  4. 『出会い系サイト規制法』 法律 第83号 (2003) https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000083

別名

  • 2000年代エロ文化
  • ゼロ年代の性
  • 2000s adult culture in Japan
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