本文へスキップ

hentai-pedia

「相手の性別が、自分の心の動きにとって本質的な変数ではない」。そうした感覚を持つ人々が、自分自身の性的指向をどう名付けるかを長く模索してきた。「バイ」(両性愛)では性別二元論的な制約を受け入れることになる。「ストレート」「ゲイ」「レズ」のいずれにも収まらない。性別を問わず、その人の人格・身体・声・存在そのものに惹かれる経験。この感覚に、英語圏の若い世代が「パンセクシュアル」(pansexual、汎性愛)という新しい名前を与えた。2010 年代以降、米国では Z 世代の自己呼称として急速に普及し、日本でも徐々に借用が広がっている。

パンセクシュアル(pansexual、全性愛)とは、性別を問わずあらゆる人に対して性的・恋愛的引力を感じる性的指向を指す英語起源の語である。略称「パン」(pan)も英語圏当事者間で運用される。LGBTQ+ の枠組内で、ゲイ・レズビアンバイセクシュアル等と並ぶ独立した性的指向カテゴリとして位置づけられる。本項では概念の定義、語源、バイセクシュアルとの関係、近年の可視化、当事者の社会的経験を扱う。

概念の定義

パンセクシュアルの中核的定義は、「性別を引力の選別基準としない性的指向」である。男性・女性・トランスジェンダー・ノンバイナリー・インターセックスなど、あらゆる性別の他者に対して、性別を問わず引力を経験する立場に立つ。

ここで重要なのは、「全ての性別に対して同等の引力を感じる」ということではなく、「性別が引力の有無を規定しない」点である。パンセクシュアル当事者の多くは、相手の性格・人格・身体的特徴・声・存在感などを引力の対象とし、性別カテゴリは引力の前提条件として機能しない、と説明する。

語源

「pansexual」の語は、ギリシャ語接頭辞 pan-(全ての、あらゆる)と sexual(性に関する)の合成語である。20 世紀初頭、ジークムント・フロイトは「人間は本来パンセクシュアルである」(全ての対象に性的にエネルギーを向けうる潜在性を持つ)との表現を用い、これが学術用語としての初出に近い要出典

20 世紀後半、性的指向のカテゴリとしての使用は限定的だったが、1990 年代後半から 2000 年代にかけて、英語圏のクィア理論・トランスジェンダー運動の中で、性別二元論を超える指向を表す語として再活性化した。2010 年代後半、ティーンエイジャー世代の SNS 文化の中で爆発的に普及した。

バイセクシュアルとの関係

パンセクシュアルとバイセクシュアル(両性愛)の関係は、当事者運動内部でも論争の対象である。両者の関係について、主に以下の三つの立場が並存する。

立場 1: 区別する立場

「バイ」は bi-(2 つの)を語源として性別二元論(男性・女性の 2 区分)に依拠する概念であり、「パン」はそれを超えてあらゆる性別を包括する概念だ、とする立場。この立場では、パンセクシュアルはバイセクシュアルより包括的な概念となる。トランスジェンダー・ノンバイナリー当事者の存在を引力の対象として明示する点で、パンセクシュアルの方が現代的で包括的だとする評価がしばしば伴う。

立場 2: 区別しない立場

現代のバイセクシュアル運動は、「バイ」の bi- を「自分と同じ性別」「自分と異なる性別」の 2 軸を指すものと再解釈し、性別二元論に依存しない包括的概念としてバイセクシュアルを定義する立場を取る。この立場では、バイセクシュアルとパンセクシュアルは事実上重なり合う概念となる。米国の主要なバイセクシュアル団体(BiNet USA, Bisexual Resource Center 等)はこの立場を取る。

立場 3: 当事者の自己選択に委ねる立場

両概念のいずれを自己呼称として用いるかは、当事者ごとの自由選択に委ねられるとする立場。年代別の傾向としては、若年世代(2000 年代以降に当事者意識を持った世代)はパンセクシュアルを、年長世代はバイセクシュアルを、それぞれ選好する傾向がある。両概念の選択は、(1) 性別二元論への自己の関係、(2) 既存当事者運動への帰属感、(3) 用語の歴史的・政治的含意、等の複数要因によって規定される。

本項は両概念を相互排他的なものとして扱わず、当事者の自己呼称選択の多様性を尊重する立場から記述する。

近年の可視化

英語圏のパンセクシュアル可視化は、2010 年代以降の有名人による公表で加速した。歌手マイリー・サイラス(2015 公表)、女優ベラ・ソーン(2019 公表)、シンガー・女優ジャネル・モネイ(2018 公表)など、エンターテインメント・メディア領域での当事者の語りが連続的に登場し、SNS 上での自己同定の波と連動した要出典

これに伴い、英語圏 SNS・メディアでの自己同定がパンセクシュアルとされる者の比率は急増した。米国の調査では 18-24 歳層での自己同定比率が、ゲイ・レズビアン・バイセクシュアルと並ぶ規模に達している要出典

日本における可視化は 2010 年代後半以降に本格化した。NHK・民放テレビでの当事者の語り、SNS 上での若年世代のカミングアウト、漫画・小説でのパンセクシュアル登場人物の描写を通じて、認知が広がりつつある。「パンの旗」(ピンク・黄色・水色の三色旗、2010 年制定)が当事者運動のシンボルとして使用される。

当事者の社会的経験

パンセクシュアル当事者が経験する社会的困難として、以下が報告される。

(1) 概念の認知不足:「バイと何が違うのか」を繰り返し説明する負担。

(2) 「節操がない」「優柔不断」と評価される経験:伝統的なジェンダー規範を背景とする偏見。

(3) バイセクシュアル消去現象に類似した「パンセクシュアル消去」:特定のパートナーとの関係期間中、その性別との関係に基づいて当事者の性的指向が外部から「異性愛」「ゲイ」「レズビアン」等と誤って分類される経験。

(4) 主流派 LGBTQ+ 運動の中での周辺化:LGBTQ+ の主要 6 文字(L/G/B/T/Q/+)の中で「P」が独立して位置づけられない構造的問題。

これら社会的困難への対応として、英語圏・日本国内で当事者団体・自助グループの組織化が進められている。

トランスジェンダー・ノンバイナリー当事者との関係

パンセクシュアル概念の発達は、トランスジェンダー・ノンバイナリー当事者の社会的可視化と並行して進展した。男性・女性の二元論を超える性別表現が社会的に承認されることで、引力の対象を性別で限定しない指向の概念的位置づけが明瞭となった。両運動は理論的・政治的に密接に連動して進展している。

関連項目

最終更新

✎ この記事の修正を提案

参考文献

  1. Tucker, Naomi (ed.) 『Bisexual Politics: Theories, Queries, and Visions』 Harrington Park Press (1995)
  2. Diamond, Lisa M. 『Sexual Fluidity: Understanding Women's Love and Desire』 Harvard University Press (2008)
  3. Galupo, M. Paz ほか 『Pansexual identity: a contested term』 Journal of Bisexuality (2017)

別名

  • パンセクシュアル
  • パンセクシャル
  • pansexual
  • パン
  • pan
  • 全性愛
人気のエロ単語 Hentai Words

調教 ちょうきょう / choukyou

フェチ・嗜好

コルセット こるせっと / korusetto

フェチ・嗜好

フェティシズム ふぇてぃしずむ / fueteishizumu

フェチ・嗜好

羞恥プレイ しゅうちぷれい / shuuchipurei

フェチ・嗜好

ネコ ねこ / neko

フェチ・嗜好