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スーツとパンプス。週五日の通勤、決まった時間に集まる集団、上司と部下の階級。学園を舞台にした青春の物語が一段落した後、社会人になった登場人物たちが引き続き欲望の主体となる場として、職場が選ばれる。

職場もの(しょくばもの)とは、会社・オフィスといった就業空間を主舞台として性愛行為を展開するエロ作品ジャンルの総称である。OL秘書・上司・部下・取引先など、職業的役割関係を物語装置として活用する類型として、エロ漫画・成人向けゲーム・同人誌の各分野で確立している。学園ものに対する成人読者向けの対概念として、2000 年代以降に独立ジャンル化が進行した。

概要

職場ものの基本構造は、会社という社会的階層空間を舞台に、職業上の役割関係(上司部下・先輩後輩・同僚・取引先)を物語装置として活用することにある。学園ものが教師生徒・同級生という固定された階層を持つのに対し、職場ものは雇用契約・契約関係・出世競争・人事評価といった社会的駆け引きを背景設定として活用する点で、より大人びた物語を展開できる枠組みである。

定型的な舞台設定は以下の通りである:

  • オフィス内: デスク・会議室・給湯室・コピー室・トイレ等の細分化された空間
  • 残業時: 大半が帰宅した後の独占空間
  • 出張先: ホテル・新幹線・タクシー等の移動空間
  • 接待・宴会: 職場の延長としての夜の場
  • 倉庫・地下駐車場: 社内の人目の届かない空間

これらは厳密に排他的ではなく、一作品が複数の場面を組み合わせることが普通である。

商業流通では DLsiteFANZA 同人の検索タグに「OL」「会社員」「職場」等が独立カテゴリとして設置されており、購入実績のある類型として認知されている。読者層は学園ものより年長傾向で、20 代後半から 40 代の社会人男性が主要顧客として推定される要出典

語源

「職場もの」は和製名詞の組み合わせで、職場という空間を主題化した作品の総称を指す。同人界隈・成人向け漫画雑誌の編集現場で 2000 年代から流通した語で、学園ものと並列する舞台設定区分として整理されている。

会社・オフィスを舞台とする性愛表現の系譜は、戦後の官能小説・週刊誌読物に遡る。1980 年代の OL ブームを背景にOLが独立した人物類型として確立し、これを舞台設定として整備した派生形態が職場ものとして定着した経緯がある。バブル期から平成中期にかけての SM 雑誌・官能小説では、上司によるセクハラを物語装置として活用する作品が多数存在し、現代の職場ものの直接の前史を成している。

物語装置としての職場

階層関係の活用

職場ものの物語装置の核心は、雇用関係に内在する階層構造を性愛関係に転写することにある。上司部下、先輩後輩、正社員と派遣、取引先と受注者といった上下関係が、物語の駆動装置として機能する。階層の上下と性的役割の上下が一致する場合と、逆転する場合の両方が定型パターンとして確立しており、後者はわからせ・逆転系の職場ものとして独立した派生形態を成している。

服装の記号性

OL秘書制服的服装(スーツ・タイトスカート・パンプス・パンスト等)は、職場ものを構成する不可欠の視覚記号である。学園ものの制服に相当する位置づけで、ジャンル固有の同定機能を担っている。スーツの上下と下着の対比、パンスト越しの肌、ヒールを脱ぎ捨てる瞬間といった視覚的定型が反復的に登場する要出典

時間的装置

残業・休日出勤・出張といった通常の業務時間を逸脱する時間帯が、物語装置として活用される。終業後の残業中の二人きり、休日のオフィス、出張先のホテルといった設定は、日常業務空間を一時的に独占空間に転じる仕組みとして機能する。

派生形態

上司部下もの

最も流通量の多い派生で、職場の階層関係を直接物語装置とする。男性上司と女性部下、女性上司と男性部下のいずれの組み合わせも継続的に発表されている。後者は痴女系・年上女性系の派生形態と結合することが多い。

同僚もの

同じ階層の同僚同士の関係を描く類型。社内恋愛・密かな関係性を主題化し、上司部下ものより心理的距離が近い設定で展開される。

不倫もの

既婚社員と独身社員の関係を描く類型。人妻NTR系と結合することが多く、職場の人間関係と家庭の人間関係の二重生活が物語装置となる。

接待・営業もの

取引先との関係性を主題とする類型。セクハラの延長としての接待や、女性営業職が取引先に身体を提供する展開が定型となる。

女教師OL秘書

特定職業に焦点を絞った下位区分。職業ごとに固有の制服・道具・行動様式があり、それぞれが独立したサブジャンルを成している。

学園ものとの対比

学園ものと職場ものは、登場人物の年齢層・社会的役割・関係性の構造で対比される。学園ものが青春・初体験・友情といった若年層特有の主題を扱うのに対し、職場ものは権力関係・経済的依存・既婚関係といった成熟した主題を扱う傾向がある。商業作品のレーベルによっては、学園もの中心の媒体と職場もの中心の媒体が分化しており、読者層の年齢に応じた住み分けが進行している要出典

受容心理

職場ものの中核的な快楽装置は、現実の社会関係の延長線上での性愛展開という設定の身近さにある。読者の大半が日常的に経験する職場空間が物語舞台となるため、個人的経験と物語装置が重なる構造を持つ。同時に、現実では超えられない階層関係(上司部下の恋愛、取引先との関係)を物語上で踏み越える解放感が、ジャンル固有の魅力として機能している要出典

ジェンダー論・労働社会学の観点からは、職場における性的事象を娯楽化することと、現実のセクハラ・パワハラの社会問題との関係が継続的に論点化されている。商業流通では合意関係の明示・年齢設定の確認が標準的に運用されており、現実の労働環境への直接的介入を回避する形式が定着している。

関連項目

最終更新

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参考文献

  1. 永山薫 『エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門』 イースト・プレス (2006)
  2. 金谷千慧子 『オフィス・レディの世界』 中央公論社 (1991)
  3. 稀見理都 『オタク文化と性表現の変遷』 太田出版 (2017)
  4. Ogasawara, Yuko 『Office Ladies and Salaried Men: Power, Gender, and Work in Japanese Companies』 University of California Press (1998)

別名

  • 職場モノ
  • オフィスもの
  • 会社もの
  • office setting
  • workplace genre
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