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エルフ・ドラゴン・ダンジョン・ギルド・冒険者。これらの記号を組み合わせた異世界が、成人向け作品の主要舞台の一つとして 30 年にわたって機能してきた。剣と魔法という装飾は、現代社会では正当化が難しい権力関係・身分関係・種族関係を、物語の中で許容可能な装置に変換する。

ファンタジーもの(ふぁんたじーもの、剣と魔法もの)とは、剣と魔法・エルフ・ドラゴン・ダンジョン・冒険者ギルド・神々と魔王等の高ファンタジー(high fantasy)要素を世界観の基盤に据えた成人向け作品ジャンルの総称である。エロゲ同人ゲームでは『ランス』シリーズ以来の主流ジャンルとして発達し、近年は異世界ものとの合流により隆盛を続けている。本項では成立経緯、典型構造、エロ表現との結合、隣接ジャンルとの関係を扱う。

概要

ファンタジーものは、(a) 現実の歴史・地理から独立した架空の世界観、(b) 魔法・モンスター・種族(エルフ、ドワーフ、獣人、ゴブリン等)・神々等の超自然要素の存在、(c) 剣・弓・魔法等の冒険的装備、(d) ギルド・冒険者・パーティー等の社会組織を共通要素として持つ。当該世界観は、英語圏のトールキン・ハワード以来の高ファンタジー、ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D、1974)等のテーブルトーク RPG、それに連なるコンピュータ RPG(ドラゴンクエストファイナルファンタジー、ウィザードリィ等)の系譜から派生した。

成人向け文脈では、当該世界観の上に、(1) 種族・身分・階級の差を性的接触の物語的正当性として運用、(2) 冒険・戦闘・敗北等の場面を性的接触のトリガーとして運用、(3) ダンジョン・酒場・宿屋・娼館等の場所設定を性的場面の舞台として運用、等の派生構造が組み込まれる。エルフ・獣人・魔族等の異種族との関係を扱う作品系列は、現実社会では成立しにくい関係性表現の場として機能する。

ジャンルとしては、エロゲ同人ゲーム領域で最も発達しているが、エロ漫画同人誌同人音声小説家になろう系成人向け小説でも横断的に運用される。媒体個別の作品設計は異なるが、ジャンルとしての世界観基盤は共通する。

語源

「ファンタジー」(fantasy)は、英語で「想像」「空想」「幻想文学」を意味する語で、20 世紀前半以降の英語圏文学・映画における幻想文学(fantasy fiction)・高ファンタジー(high fantasy)の発達と並行して文学ジャンル名として定着した。J・R・R・トールキン『指輪物語』(1954–1955)、ロバート・E・ハワード『コナン』(1932–)等が、現代ファンタジーの源流として広く認知される。

日本のサブカル文脈での「ファンタジー」「剣と魔法」の語の流通は、1980 年代の RPG ブーム(『ドラゴンクエスト』1986、『ファイナルファンタジー』1987 等)を経て、1990 年代以降のサブカル基幹ジャンルとして定着した経緯にある。「ファンタジーもの」の呼称は、特定世界観を共有する作品群を横断的に指す業界呼称として 2000 年代以降に定着した。

「剣と魔法」は sword and sorcery の和訳的呼称で、ハワードの『コナン』系譜の幻想冒険文学を指すジャンル名として 1960 年代の英語圏で成立した。日本ではこの語感が高ファンタジー全体の代名詞として運用される傾向にある。

歴史

1980 年代:RPG ブームと初期エロゲ

ファンタジーものエロゲの起源は、1980 年代後半の家庭用 PC(NEC PC-8801、PC-9801、シャープ X68000 等)におけるファンタジー RPG エロゲの誕生に求められる。エルフ『ドラゴンナイト』(1989–)、アリスソフト『ランス』(1989–)等は、当該時期の代表シリーズとして長期にわたるシリーズ展開を遂げた。

これらの作品は、剣と魔法のファンタジー世界観・RPG ゲームシステム・性描写を統合した複合作品として、後のファンタジーエロゲ同人ゲームの原型を確立した。アリスソフト『ランス』シリーズは 30 年以上にわたって継続展開され、ファンタジー成人向け作品の代名詞的シリーズとして広く認知される。

1990 年代:ジャンルの体系化

1990 年代を通じて、ファンタジーものはエロゲ業界の中核ジャンルの一つとして体系化された。複数のメーカー(エルフ、アリスソフト、ジャスト、戯画、シェイドウェア等)が、各々独自のファンタジー世界観を構築・継承する形で作品を継続供給した。RPG・シミュレーション・アドベンチャー等のゲームシステムとファンタジー世界観の組み合わせが多様化した。

2000 年代:同人ゲームの普及

2000 年代に入ると、RPG ツクール 2000・XP 等のフリーゲーム制作ツールの普及により、個人・小規模サークルがファンタジー同人ゲームを制作・頒布できる基盤が成立した。DLsite同人ゲームの主要配信プラットフォームとして拡大し、ファンタジー成人向け同人ゲームの市場が急成長した。

フィスト☆『くノ一忍法帖』(2006)等が初期の代表作として記憶される。RPG ツクール製の中世ファンタジー RPG・ダンジョン探索 RPG が、低価格(1,000–2,500 円)で大量供給される構造が成立した。

2010 年代:なろう系異世界転生との合流

2010 年代後半以降、小説家になろう系の異世界ものの急成長により、ファンタジーものは異世界転生主題と部分的に合流した。両者は概念的に独立した別ジャンルだが、現代の作品流通においては「異世界転生 + ファンタジー世界観」の組み合わせが定型として広く採用される状況にある。

なろう系発の異世界ものの典型的世界観(エルフ・ドラゴン・冒険者ギルド・ステータス・スキル等)は、ファンタジーものの伝統的世界観を継承しつつ、ゲーム的設定を強化した派生形態として位置づけられる。

2020 年代:多媒体展開

2020 年代以降、ファンタジーものはエロ漫画エロゲ同人ゲーム同人音声なろう系成人向け小説の各媒体で並列展開する基幹ジャンルとして定着した。媒体横断的な世界観基盤・キャラクター類型の共有が進行し、媒体個別の差別化は作品設計の主題・トーン・対象層に応じて運用される。

典型構造

世界観の基本要素

ファンタジーものの世界観は、(1) 中世ヨーロッパ風の社会(王国・領主・農村・教会・冒険者ギルド)、(2) 異種族(エルフ・ドワーフ・獣人・魔族・モンスター)の存在、(3) 魔法体系(攻撃魔法・回復魔法・召喚魔法等の系統分類)、(4) 神々と魔王・善悪二元論的構図、(5) ダンジョン・モンスター・冒険等のゲーム的構造、を共通要素として持つ。

当該世界観は、トールキン以来の高ファンタジー文学、D&D 等のテーブルトーク RPG、ドラクエ・FF 等のコンピュータ RPG の慣習を統合・継承したもので、サブカル全体で広く共有された記号体系を形成している。

主要キャラクター類型

ファンタジー成人向け作品の主要キャラクター類型は、(a) 主人公(冒険者・勇者・シスター・魔法使い・剣士等)、(b) ヒロイン群(エルフ・獣人・人間王女・女騎士・シスター・魔王の娘等)、(c) 悪役(魔王・盗賊・モンスター・領主等)、に類型化される。各キャラクター類型に固有の役割・関係構造が確立している。

性描写との結合

ファンタジー成人向け作品では、性描写は世界観・物語進行と統合された形で配置される。冒険・戦闘の報酬としての性描写、ダンジョン・宿屋・娼館等の場所設定での性描写、種族間関係(エルフ・獣人等との関係)の物語的展開としての性描写等、世界観要素を演出装置として活用する構成が標準化している。

ハーレム構造

成人向けファンタジーものでは、主人公が複数のヒロインと関係を結ぶハーレム構造が広く採用される。エルフ・獣人・人間・魔族・神族等の異種族横断的なハーレム構成、職業・身分(王女・騎士・シスター・冒険者・娼婦等)横断的なハーレム構成等、世界観要素を活用したハーレム形成が定型として運用される。

派生形態と隣接概念

異世界ものとの関係

異世界ものはファンタジーもののサブジャンルとして位置づけられる。両者は世界観基盤(剣と魔法のファンタジー)を共有しつつ、現代日本からの転生・転移要素の有無で区別される。「異世界もの」が転生・転移を要件とするのに対し、ファンタジーもの全般は当該要件を欠く純粋ファンタジー作品も含む点で広い概念である。

エロ RPG との関係

エロ RPGはゲームシステム軸の分類で、ファンタジーものは世界観軸の分類である。両者は概念的に独立した別レイヤーで、ファンタジー世界観 + RPG システムの組み合わせ作品が両ジャンルの中核を成す一方、ファンタジー世界観 + ノベル・アドベンチャーシステムの組み合わせ、SF 世界観 + RPG システムの組み合わせ等の交差作品も継続的に存在する。

サブジャンル

ファンタジーものの代表的サブジャンルとして、(1) ダンジョン探索系(地下迷宮・モンスター戦闘を主軸)、(2) 冒険者ギルド系(街拠点・依頼受注を主軸)、(3) 勇者・魔王系(善悪対決を主軸)、(4) 暗黒ファンタジー系(陰惨・退廃の世界観)、(5) シスター・神官系(教会・宗教の主題)、(6) エルフ・獣人特化系(特定種族との関係を主軸)、等が挙げられる。

蹂躙・敗北系

成人向けファンタジーもの特有の派生サブジャンルとして「敗北系」(主人公・ヒロインが敵に敗北して性的辱めを受ける構造)、「ゴブリン系」(モンスターによる蹂躙を主題)等の系列が独立カテゴリ化している。当該系列は、ファンタジー世界観の善悪対立・モンスター存在を活用した成人向け派生形態として位置づけられる。鬼畜系・凌辱系の演出様式と部分的に重なる。

文化的言及

業界基幹ジャンルとしての位置

ファンタジーものはエロゲ同人ゲーム業界の基幹ジャンルとして 30 年以上の継続的歴史を持ち、業界の表現様式・キャラクター類型・ゲーム設計の標準を形成してきた。アリスソフト『ランス』シリーズは 1989 年から 2018 年完結まで継続展開し、業界史的代名詞として記憶される。

国際的並行発達

英語圏のファンタジー成人向け作品は、TFGames・FurAffinity 等の独自プラットフォームを中心に並行発達している。英語圏作品は furry・transformation・muscle 等の独自サブジャンルを発達させており、日本のファンタジーものとは異なる嗜好構造を持つ独立領域として整理される。日本のファンタジー同人ゲームの英訳作品の流通も継続している。

サブカル一般への影響

ファンタジーものの世界観・記号体系は、成人向け文脈の外側に出ても、ライトノベル・アニメ・コンシューマゲーム・モバイルゲーム等の各領域で広く共有される基盤となっている。「エルフは耳が長い」「冒険者ギルドで依頼を受ける」「ダンジョンには階層がある」等の共有了解は、サブカル全体の記号体系を形成する。要出典

関連項目

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参考文献

  1. 更科修一郎ほか 『美少女ゲームの臨界点』 波状言論 (2004)
  2. 中川大地 『コンピュータゲームの神話学』 PLANETS (2016) — RPG・ファンタジーゲームの歴史
  3. Saito, Tamaki 『Beautiful Fighting Girl』 University of Minnesota Press (2011)
  4. 河島伸子 『コンテンツ産業論──混淆と伝播の日本型モデル』 ミネルヴァ書房 (2009)

別名

  • ファンタジー
  • 剣と魔法もの
  • high fantasy
  • sword and sorcery
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