ボタンを連打して剣を振り、回避し、敵に囲まれて敗北すると、画面が暗転して敗北イベントが流れ始める。プレイヤーの操作技能と性描写が直接結びついた成人向けゲーム形式が、2010 年代以降の同人ゲーム市場で独立サブジャンルとして確立した。
アクションエロゲ(あくしょんえろげ、アクションゲー、同人アクション)とは、リアルタイム操作のアクション・横スクロール・2D 格闘等のゲームシステムを採用した成人向けゲームの総称である。狭義にはエロゲ・同人ゲームのうちアクションシステムを主軸とするものを指し、広義にはノベル・アドベンチャーシステムを採用しないリアルタイム操作型成人向けゲーム全般を指す。本項では成立経緯、典型構造、同人領域での発達、隣接ジャンルとの関係を扱う。
概要
アクションエロゲの中核は、(a) リアルタイムでのキャラクター操作(移動・攻撃・回避・ジャンプ等)、(b) 戦闘・探索の場面と性描写場面の交互配置、(c) 操作の成否(敗北・特定条件達成)が性描写トリガーとなる構造、にある。ノベルゲーム・アドベンチャーゲームのテキスト主導とは対照的に、プレイヤーの操作技能・反応速度がゲーム進行と直接結びつく点が特徴である。
同人ゲーム領域での発達が顕著で、Unity・GameMaker Studio・WOLF RPG エディター・ティラノスクリプト等の制作ツールの普及により、個人サークルが横スクロールアクション・トップダウンアクション・2D 格闘ゲーム等を低コストで制作できる基盤が整った。DLsite・FANZA を主戦場として、月間数十タイトル規模の新作が継続的に供給される状況にある 要出典。
成人向け文脈での主要構成要素は、(1) 「敗北系」(プレイヤーキャラクターが敵に敗北して性的辱めを受ける場面)、(2) 「捕獲系」(敵がヒロインを捕獲して性的場面が発生)、(3) 「変身系」(TS・サキュバス化・触手化等の身体変容を主題化)、(4) 「掠奪系」(村・都市の住民を性的に蹂躙する場面)等の構成パターンに類型化される。商業エロゲよりも同人ゲーム・成人向けインディーゲーム領域で発達したサブジャンルとして位置づけられる。
語源
「アクション」(action)は、ゲーム業界で「リアルタイム操作型ゲーム」を指す広い分類用語である。1970 年代後半のアーケードゲーム黎明期以来運用されてきた語で、シューティング・格闘・プラットフォーマー・ハック&スラッシュ等の派生サブジャンルを包含する上位概念として機能する。「アクションエロゲ」は、当該分類用語と「エロゲ」の単純な合成語で、業界呼称として 2000 年代後半から流通した。
「アクションゲー」は同人界隈の俗称で、「ゲー」は「ゲーム」の俗語的略形である。同様に「エロゲ」「エロゲー」「抜きゲー」「泣きゲー」等の系列に並ぶ呼称として運用される。
歴史
1990 年代前半:商業エロゲの初期アクション系
商業エロゲ領域でのアクションエロゲの前史は、1990 年代前半の PC-9801 等の家庭用 PC 環境にある。アリスソフト・エルフ等の主要メーカーが、ノベル・アドベンチャー系を主流としつつも、一部にアクション・シューティング・パズル等のゲームシステムを組み込んだ作品を継続的に発表した。
アリスソフト『DPS 全部』『闘神都市』(1990)、『プロスチューデント G』(1991)等は、当該時期のアクション・シミュレーション系の代表作として挙げられる。これらは独立アクションゲームではなく、複数ゲームシステムの統合作品であったが、後の同人アクションエロゲの素地を形成した。
2000 年代:同人ゲーム黎明期
2000 年代に入ると、家庭用 PC の処理能力向上、同人ゲーム制作ツール(WOLF RPG エディター 2008 年開発、GameMaker・Unity 等)の普及により、個人サークルが本格的なアクションゲームを制作できる環境が整った。当該時期の代表作として、メフィスト☆『くノ一忍法帖』(2006)等が挙げられる。
DLsite が同人ゲームの主要配信プラットフォームとして拡大し、低価格(1,000–2,500 円)で大ボリュームのアクションエロゲが、小サークル単位で継続供給される構造が成立した。
2010 年代:アクション同人エロゲの隆盛
2010 年代を通じて、アクションエロゲは同人ゲーム市場の主要サブジャンルとして隆盛を遂げた。横スクロールアクション、トップダウンアクション、2D 格闘、メトロイドヴァニア風探索アクション等、多様なゲームシステムが並列発達した。
「敗北系」(プレイヤーが敵に敗北して性的辱めを受ける構造)、「触手系」「TS 変身系」「魔法少女堕とし系」等の派生サブジャンルが独立カテゴリ化した。当該系列は、商業エロゲとは独立した同人領域の表現様式として確立した。
2020 年代:Steam・国際展開
2020 年代以降、Steam の成人向けタグ解禁、Itch.io・Patreon・Subscribestar 等の国際同人プラットフォームの普及により、日本の同人アクションエロゲの英訳・国際展開が進展した。同時に英語圏インディーゲーム制作者によるアクション系成人向け作品の流入も継続しており、市場の双方向化が観察される 要出典。
典型構造
敗北系
成人向けアクションゲームに最も特徴的な構成は「敗北系」(defeat scene)である。プレイヤーキャラクターがゲーム内で敵に敗北すると、敗北状態を契機として性的場面に移行する構造を持つ。当該構造は、(1) 操作技能の不足が性描写のトリガーとなる、(2) プレイヤーの「失敗」が物語的演出として機能する、(3) 周回プレイで多様な敗北イベントを収集する遊び方を誘導する、等の作品設計上の効果を生む。
敗北系は、メフィスト☆『くノ一忍法帖』以来の同人アクションエロゲの中核構造として確立しており、ゲーム業界研究の主題としても扱われる主題である 要出典。
捕獲・拘束系
敵がヒロインを捕獲・拘束して性的場面が発生する構造は、「捕獲系」「拘束系」として独立したサブジャンルを形成している。プレイヤー側の操作で逃走・脱出を試みる構造、捕獲後の段階的な変容(精神改変・調教)を扱う構造等、多様なゲーム性が組み合わされる。
探索・収集系
ダンジョン探索・アイテム収集の過程で性描写場面が組み込まれる構造は、メトロイドヴァニア風探索アクションの成人向け派生として広く運用される。エリア単位の段階的解放、特定条件達成での性描写イベント解放、隠しエリア・隠しイベントの収集要素等、ゲーム的探索の楽しみと性描写収集の楽しみを統合する構造である。
2D 格闘・対戦系
2D 格闘システムを成人向け文脈で運用する作品系列も独立サブジャンルを形成している。対戦敗北時の性描写場面、特殊技・組み技としての性的接触の演出、複数キャラクターの組み合わせによる演出等、格闘ゲームのシステム特性を活用した構成が標準化している。
サキュバス・モンスター娘系
ファンタジー世界観・サキュバス・モンスター娘等の異種族設定を活用した作品系列は、アクションエロゲの代表的派生形態として位置づけられる。当該系列はファンタジーもの・異世界ものとの合流領域で発達しており、世界観・キャラクター類型・性描写演出の統合的構成を取る。
派生形態と隣接概念
エロ RPG との差
エロ RPGはターン制・コマンド入力型のロールプレイングゲームを基盤とする成人向けゲーム系列である。アクションエロゲがリアルタイム操作を要件とするのに対し、エロ RPG はターン制戦闘・コマンドメニューによる戦略的操作を主軸とする点で構成上の差異がある。両ジャンルの中間領域(アクション RPG)も継続的に存在する。
ノベルゲームとの差
エロゲの主流であるノベル・アドベンチャー型作品は、テキスト主導の物語体験を中核とし、プレイヤーの操作技能を要求しない。アクションエロゲは操作技能とゲーム進行の結合を要件とする点で、ノベル系作品とは異なる作品設計を取る。
育成エロゲとの差
育成エロゲは、長期的なキャラクター育成を主軸とするシミュレーション系で、アクションエロゲとは異なる遊びの構造を持つ。育成エロゲの中にアクションパートを組み込む複合作品(育成 + アクション)も継続的に存在し、両ジャンルの中間領域として運用される。
商業エロゲとの差
商業エロゲ業界はノベル・アドベンチャー系を主流とし、アクション系は限定的な比重に留まる。同人領域でアクションエロゲが発達した背景には、(1) アクション系の制作工数が商業ノベルゲームより少ない、(2) インディーゲーム制作ツールがアクション系制作に親和的、(3) 商業レーベルの経営判断としてノベル系が安定的、等の要因が指摘される 要出典。
文化的言及
同人ゲーム市場の主軸
アクションエロゲは、2010 年代以降の同人ゲーム市場の主軸ジャンルの一つとして位置づけられる。DLsite・FANZA の月間ランキング上位、特に長期的な売上累積では、アクション系・RPG系の作品群が固定的に上位を占める。
海外インディーゲーム界との接続
英語圏インディーゲーム界では、Patreon・Subscribestar 等の購読制プラットフォームを通じた成人向けアクションゲーム開発が、独立した一市場を形成している。日本の同人アクションエロゲと英語圏インディー成人向けアクションは、技術基盤(Unity・Godot 等)・販売プラットフォーム(Itch.io・Steam)を共有しつつ、表現様式・キャラクター類型に異なる傾向を持つ並行発達領域として整理される。
制作ツールの民主化
アクションエロゲ市場の発達は、ゲーム制作ツールの民主化と並行する現象である。Unity・GameMaker Studio・Godot・WOLF RPG エディター等のフリーないし低価格ツールの普及により、商業ゲーム制作の経験を持たない個人クリエイターが本格的アクションゲームを制作・公開できる基盤が整った。当該基盤は、成人向け文脈に限らないインディーゲーム全般の発達と並行する。
関連項目
最終更新
「アクションエロゲ」の同人作品
Powered by FANZA Webサービス
「アクションエロゲ」の同人作品(DLsiteランキング)
参考文献
- 『美少女ゲームの臨界点』 波状言論 (2004)
- 『コンピュータゲームの神話学』 PLANETS (2016)
- 『RPGツクールとフリーゲームと同人ゲームについて』 note(オタク史) — RPG ツクール・WOLF RPG エディター系同人ゲームの普及 https://note.com/hogehoge_aichi/n/ncaf3f7f284e1
- 『コンテンツ産業論──混淆と伝播の日本型モデル』 ミネルヴァ書房 (2009)
別名
- アクションゲー
- 同人アクション
- アクション系エロゲ
- action eroge