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商業 AV メーカーが扱わないニッチな主題、個人撮影系の素人感、3D ソフトで制作された CG アニメーション。これらの動画作品が、即売会で DVD-R に焼かれて頒布されていた時代から DLsite で月間ランキングを占有する時代まで、同人動画は独立した一市場として成長してきた。

同人動画(どうじんどうが、同人 AV、同人映像)とは、商業 AV メーカーの製作体制を経ずに個人または小規模サークルが制作・頒布する成人向け動画作品の総称である。実写個人撮影系、3D CG アニメーション系、MMD(MikuMikuDance)系、Live2D 系、自主制作アニメ系等を包含し、同人誌同人ゲーム同人音声に並ぶ同人作品形式の一つとして DLsite・FANZA で独立カテゴリ化している。本項では成立経緯、主要サブジャンル、商業 AV との差、流通形態を扱う。

概要

同人動画の中核には、(1) 商業 AV メーカーの製作・流通体制を経ない自主制作、(2) 個人または十数名以下の少数集団による制作、(3) DL 配信プラットフォーム・即売会等での自家頒布、という三要素が共通する。形式は実写・CG アニメーション・MMD・Live2D 等多岐にわたり、性的主題を扱う成人向け作品と扱わない一般向け作品の双方を含む(本項は成人向けを主に扱う)。

主要な流通経路は、(1) DLsite(同人動画カテゴリ)、FANZA、Ci-en 等の電子配信、(2) コミケ・即売会での物理頒布(DVD-R・USB メモリ等)、(3) BOOTHとらのあなメロンブックス等の委託頒布、である。2010 年代後半以降は電子配信が圧倒的主流となっており、物理メディアによる頒布は限定的な位置にある。

DLsite 同人動画カテゴリでは、(a) 実写個人撮影系、(b) 3D CG アニメーション系、(c) MMD 系・Live2D 系の VRoid 系、(d) 自主制作アニメ系の各系統が並列発達する。商業 AV と異なり、ニッチな嗜好・特殊な主題・個人撮影特有の親密性等を扱える点が、当該領域の市場ポジショニングを形成している 要出典

語源

「同人動画」は「同人誌」「同人ゲーム」「同人音声」と並ぶ「同人○○」系の派生語で、2000 年代後半から 2010 年代にかけて配信プラットフォームのカテゴリ名として定着した。「同人 AV」「同人映像」「個人撮影 AV」も同義で運用され、文脈に応じて使い分けられる。

「個人撮影」は実写系の同人動画を指す業界呼称で、商業 AV と異なり個人(またはカップル)による撮影・制作を強調する用語である。当該系列は素人感・親密性・ニッチな嗜好等を売りに据える作品設計を特徴とする。「ハメ撮り」と部分的に重なるが、ハメ撮りは撮影技法を指し、個人撮影は制作主体を指す点で概念的に区別される。

「MMD」は MikuMikuDance(2008 年に樋優が公開したフリー 3D アニメーションソフト)の略号で、3D モデル・モーション・カメラワークの統合制作を可能にした個人開発ツールである。同ツールは初音ミク等のボーカロイドキャラクター用に作られたが、後に汎用 3D アニメーションツールとして同人動画制作に広く運用されるに至った。

歴史

1990 年代後半–2000 年代前半:VHS・DVD-R 時代

同人動画の前史は、1990 年代後半から 2000 年代前半の VHS テープ・DVD-R による物理頒布にある。家庭用ビデオカメラ・DV カメラ・PC ビデオ編集環境の普及により、個人で撮影・編集した実写動画を VHS・DVD-R に焼いて即売会で頒布する慣行が成立した。

当該時期の同人動画は、商業 AV と比較して画質・編集技術が大きく劣り、市場規模も限定的であった。流通もコミケ・即売会の物理頒布が中心で、DL 配信は技術的・帯域的制約から限定的であった。

2000 年代後半:DL 配信の興隆

2000 年代後半、家庭用ブロードバンド普及、PC ビデオ処理能力の向上、動画圧縮技術の発達(H.264 等)により、同人動画の DL 配信が現実的選択肢となった。DLsite が同人動画カテゴリを整備し、月間配信本数・売上の双方が成長を始めた。

3D CG アニメーション系の同人動画も同時期に発達した。ライトウェーブ・3ds Max・Blender 等の 3D ソフトが個人開発者の手に届く価格帯となり、MMD(2008 年公開)等のフリーソフトの登場により、3D アニメーションの個人制作が大衆化した。

2010 年代:多様化と隆盛

2010 年代を通じて、同人動画は多様化と市場拡大を遂げた。実写個人撮影系では、家庭用フル HD カメラ・スマートフォンカメラの普及により、画質・編集水準が大幅に向上した。商業 AV と遜色ない画質を持つ個人撮影作品が継続的に登場するに至った。

3D CG アニメーション系では、Source Filmmaker(SFM)・Blender・MikuMikuDance(MMD)等のツール群を活用した同人動画が独立サブジャンルを形成した。商業 AV では実現困難な世界観(ファンタジー・SF・異世界)・キャラクター(アニメ的造形・ふたなり等)を扱う点で、当該系列は独自の市場ポジショニングを獲得した。

2020 年代:VTuber・Live2D・AI 生成

2020 年代に入ると、VTuber 文化と連動する Live2D 系・VRoid 系の同人動画が独立サブジャンルとして発達した。3D アバターによるバーチャル配信・動画制作の慣行が一般化し、当該系列の成人向け派生領域が形成された。

並行して、AI 画像・動画生成ツール(Stable Diffusion・SD-WebUI 等)の普及により、AI 生成系の同人動画作品が登場するに至った。AI 生成作品の著作権・倫理的問題は議論が継続しており、配信プラットフォームの取り扱い方針も流動的である 要出典

主要サブジャンル

実写個人撮影系

実写個人撮影系は、同人動画の最大ジャンルの一つで、(1) 個人(またはカップル)による撮影、(2) 家庭・ホテル・自然環境等の私的空間での撮影、(3) 素人感・親密性を売りに据える作品設計、を特徴とする。商業 AV と比較して、(a) 演技より自然性、(b) スタジオセットより私的空間、(c) 大規模制作より個人的親密性、を重視する作品設計を取る。

代表的サブジャンルとして、ハメ撮り系、夫婦・カップル投稿系、コスプレ実写系、特定フェチ対応系等が並列発達している。当該系列は、後述する「個人ファンクラブ」「OnlyFans」等の購読制プラットフォームと部分的に流通基盤を共有する。

3D CG アニメーション系

3D CG アニメーション系は、Blender・3ds Max・Maya・Unity・Unreal Engine 等の 3D ソフトで制作された CG アニメーション動画である。商業 3D アニメと比較して制作工数は限定的だが、ニッチな主題・特殊な世界観・キャラクター造形の自由度等で独自の市場ポジショニングを持つ。

特徴的な系列として、商業ゲーム(ファイナルファンタジーテイルズ・洋ゲー等)のキャラクターを使った二次創作 CG アニメーション、ファンタジー・SF 世界観のオリジナル CG アニメーション等が挙げられる。

MMD 系

MikuMikuDance(MMD)系の同人動画は、初音ミク等のボーカロイドキャラクター・MMD モデルを使用した 3D アニメーション作品である。MMD コミュニティは元来非成人向けキャラクターダンス動画・PV 制作を主軸とするが、その派生領域として成人向け作品が独立サブジャンルを形成している。

MMD 系作品はキャラクターモデルの権利関係(配布規約・二次利用規約等)に強く制約されており、特定モデルの成人向け利用禁止等のコミュニティ規範が存在する。当該規範を尊重する慣行と、規範を逸脱した作品流通の問題は、継続的議論の対象である 要出典

Live2D・VRoid 系

Live2D・VRoid 系は、2D イラスト・3D アバターを動的に動かすツールを用いた同人動画である。VTuber 文化の発達と並行して、当該系列の成人向け派生領域が 2020 年代以降に発達した。商業 VTuber が成人向けコンテンツを禁止する慣行を持つのに対し、同人領域では成人向け Live2D・VRoid 作品が独立カテゴリとして並列する。

自主制作アニメ系

自主制作アニメ系は、伝統的なセルアニメ・デジタルセル風アニメーションの制作技法を個人サークルで展開した同人動画である。制作工数が極めて大きいため、市場規模は他のサブジャンルと比較して限定的であるが、商業アニメに匹敵する高品質作品が継続的に発表されている。

商業 AV との差

制作体制

商業 AV はメーカー・プロダクション・スタジオ・専属女優企画女優・スタッフによる組織的制作を経るのに対し、同人動画は個人・少数集団による自主制作を経る。出演者の選定・契約・撮影体制・編集・流通の全工程で、両者は異なる制作論理を持つ。

表現の自由度

同人動画は商業 AV と比較して、(1) ニッチな主題・特殊嗜好の作品制作が可能、(2) 業界自主規制機関(映倫・倫理機構)を経ない、(3) 商業流通の制約を受けない、等の表現の自由度を持つ。一方で、(a) わいせつ図画頒布罪・児童ポルノ法等の刑事規制、(b) 配信プラットフォーム側の作品基準、は商業 AV と同様に適用される。

出演者の地位

同人実写系の出演者は、商業 AV の専属女優企画女優とは異なり、個人撮影系の自主参加者・カップル・パートナー等の身分で関与する。AV 新法以降の業界規制は、商業 AV と同人動画で異なる適用範囲・運用基準を持ち、現行制度上の取扱いには引き続き議論がある。

流通形態

商業 AV は専門レーベル・販売店舗・配信サービスを通じた組織的流通を経るのに対し、同人動画は DLsite・FANZA・即売会・委託店舗を通じた個別作家単位の流通を経る。両者の流通基盤は部分的に重なるが(例えば FANZA は商業・同人の双方を扱う)、流通の単位・販売規模・継続性が大きく異なる。

文化的言及

個人クリエイターエコノミーとの結合

同人動画市場の発達は、2010 年代後半以降の個人クリエイターエコノミーの発達と並行する現象である。Patreon・Pixiv FANBOX・Ci-en・myfansOnlyFans等の購読制プラットフォームで、同人動画クリエイターが固定購読者層を獲得して継続的収入源を確保する流路が定着した。

特に実写個人撮影系では、購読制プラットフォームでの月額会員向け配信、単発作品の都度販売、SNS でのプロモーションを統合した個人ブランド型ビジネスモデルが標準化している。

国際展開

英語圏では、同人動画に対応する領域として indie pornamateur pornself-shot porn 等が運用される。Pornhub・XVideos 等の動画プラットフォームでの個人投稿系コンテンツ、OnlyFans・Fansly 等の購読制プラットフォームでのクリエイター主導コンテンツが、当該領域の主要構成要素となっている。

日本の同人動画と英語圏 indie porn は、技術基盤(動画編集ソフト・配信プラットフォーム)を共有しつつ、文化的背景・市場構造・表現様式に異なる傾向を持つ並行発達領域として整理される。

関連項目

最終更新

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参考文献

  1. 河島伸子 『コンテンツ産業論──混淆と伝播の日本型モデル』 ミネルヴァ書房 (2009)
  2. 『DLsite 同人動画カテゴリ売上動向』 DLsite 公式ブログ (2020)
  3. 永山薫 『エロマンガ・スタディーズ──「快楽装置」としての漫画入門』 イースト・プレス (2006)
  4. 『Aアダルトビデオ業界の変容と個人撮影』 AV 業界誌(雑誌) (2020) — 業界変容と個人撮影系コンテンツの興隆

別名

  • 同人 AV
  • 同人映像
  • 個人撮影 AV
  • doujin video
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