海綿体(かいめんたい、英: corpus cavernosum / cavernous body)は、陰茎および陰核に存在するスポンジ状の勃起組織の総称である。血管洞(血液を蓄える微細な空間)が緻密な結合組織に包まれた構造をとり、性的興奮時に動脈血が急速に流入することで組織が膨張・硬化し、勃起が起きる。
陰茎における海綿体の構造
陰茎の内部には3本の海綿体が縦走している。
陰茎海綿体(corpus cavernosum penis) は2本の円柱状構造が陰茎背側に並走するもので、勃起の主体を担う。各海綿体は「白膜(tunica albuginea)」と呼ばれる強靭な線維性被膜に覆われており、血液が充満した際の膨張を制限して陰茎を硬化させる。
尿道海綿体(corpus spongiosum) は陰茎腹側の正中を走る1本の構造で、尿道を包んでいる。先端部は亀頭として膨大し、陰茎海綿体の先端を覆う。尿道海綿体は勃起時も陰茎海綿体より圧が低く保たれるため、射精時に尿道が閉塞されない。
勃起の神経機構: 性的刺激によって副交感神経が活性化すると、一酸化窒素(NO)が海綿体平滑筋に作用して弛緩を引き起こす。その結果、螺旋動脈が拡張して血液が海綿体洞に急速に流入する。同時に静脈の流出が制限(静脈閉塞機序)されることで、海綿体内圧が上昇し勃起が完成する。PDE5阻害薬(シルデナフィル/バルデナフィル等)はこの一酸化窒素シグナル経路を増強することで勃起を促進する。
陰核における海綿体
陰核にも陰茎と相同の海綿体組織が存在する。医学・解剖学の分野で長く軽視されてきたが、1998年にオーストラリアの泌尿器科医ヘレン・オコネル(Helen O’Connell)らのMRI研究によって、陰核の実際の大きさと海綿体の広がりが初めて詳細に記述された。
陰核海綿体(clitoral bodies)は外表から見える「陰核亀頭」の内部に2本の海綿体柱(corpora cavernosa clitoridis)があり、恥骨弓に沿って左右に広がる「陰核脚(crus clitoridis)」に続いている。また前庭球(vestibular bulbs)と呼ばれる組織も海綿体と連続しており、膣口の両側に位置する。これらを合わせた陰核全体は長さ7〜12 cmに達するとされ、外表に露出しているのはごく一部である。
性的興奮時に陰核海綿体にも血液が充満し、陰核亀頭が膨張・充血し感受性が上昇する。この状態が陰茎の勃起に対応する「クリトリス勃起(clitoral erection)」であり、オルガズムに向けた性的反応の中核プロセスである。
海綿体と性機能障害
海綿体の機能不全は勃起障害の直接的な原因となる。
加齢・糖尿病・高血圧・喫煙によって海綿体の平滑筋組織が線維化すると、弛緩反応が低下して血液の充填が不十分になる。動脈硬化による海綿体動脈の狭窄は流入血量を減少させる。これらが複合した状態が器質性勃起障害の主な病態である。
会陰部・骨盤への外傷(自転車サドルによる慢性圧迫を含む)も海綿体への血流障害を引き起こしうる。根治的前立腺全摘手術では海綿体神経(cavernous nerves)への損傷リスクがあり、術後勃起機能の温存が外科的課題として重視されている。
ペイロニー病
ペイロニー病(Peyronie’s disease)は、陰茎海綿体の白膜に繊維性プラークが形成される疾患で、勃起時の陰茎湾曲・疼痛・短縮を引き起こす。原因は不明な点が多いが、海綿体への微小外傷の反復が関与するとされる。治療には内服薬・コラゲナーゼ局所注射・手術が選択肢として存在する。
最終更新
別名
- 陰茎海綿体
- 陰核海綿体
- corpus cavernosum
- 尿道海綿体