精嚢(せいのう)とは、男性の骨盤内、膀胱の後部・前立腺の上方に位置する一対の管状分泌腺である。精嚢腺とも呼ばれる。精液の大部分(約50〜65%)を産生し、精子の活動を支える栄養素や緩衝物質を供給する役割を担う。
解剖学的位置と構造
精嚢は膀胱の後下方、直腸の前方に位置し、左右一対で存在する。長さは約5〜7cm、内部は屈曲した管腔構造で、黄白色の粘稠な液体を分泌する。精嚢の出口は精管(輸精管)と合流して射精管を形成し、前立腺を通って尿道に開口する。
射精時には精嚢・精管・前立腺が協調して収縮し、精液が尿道から排出される。この一連の収縮が射精の物理的メカニズムを構成している。
精嚢が産生する成分
精嚢が産生する分泌液には以下の主要成分が含まれる。
フルクトース:精子の主要なエネルギー源。精子は血糖ではなく精嚢由来のフルクトースを利用して運動エネルギーを得る。精嚢の機能低下は精液中フルクトース濃度の低下として現れ、精子運動性の低下につながる。
プロスタグランジン:精嚢から分泌されるホルモン様物質で、女性生殖管の蠕動運動を促進し精子の子宮内移行を助けるとされる。
精液凝固因子:射精直後の精液の一時的な凝固(ゼリー状化)に関与する因子。精液は数分後に前立腺由来の酵素によって液化する。
アルカリ性緩衝物質:膣内の酸性環境から精子を保護するための緩衝作用を持つ成分。
性科学的関心
精嚢は性的快感との直接的な関係においても注目される部位である。射精時の精嚢収縮は射精感覚の構成要素であり、精嚢の充満度(精液の蓄積量)が射精感覚の強度に影響するという見方がある。禁欲期間が長くなると精嚢に精液が充満し、次の射精時の快感が増すという実感を語る人が多い。
精嚢炎(精嚢の炎症)は射精時の痛み・血精液症(精液への血液混入)の原因となる場合があり、性的機能に影響を与える疾患として泌尿器科的な関心対象となっている。
前立腺と精嚢の間には男性のいわゆる「前立腺オーガズム」との関連も研究されており、肛門から内側への刺激で前立腺・精嚢を介した射精感覚が生じるという報告がある。
最終更新
別名
- 精嚢腺
- 精のう
- seminal vesicle