胸元から脚の付け根まで一枚の布が連続して身体を覆っている。布が途切れないにもかかわらず、ハイレグに切り上げられた股下、背中の大きく開いた切り込み、胸元の浅いV字が、覆われている領域の方をかえって意識させる。ワンピース水着(わんぴーすみずぎ、英: one-piece swimsuit)とは、胸部から腰部までを一枚仕立てで覆う女性用水着、またはその姿を性的興奮の対象とする嗜好の総称である。ツーピース型のビキニ、競技用に設計された競泳水着、学校水泳授業用のスクール水着とは別系列の、装飾性とオシャレ性を重視した夏季衣装としてのワンピース型水着が、独自の嗜好領域を形成してきた。
語源と定義
英語 one-piece は「ひと続きの」の意で、上下が分離していない衣装を指す。日本語では「ワンピース水着」「ワンピ水着」と呼ばれる。本項目で扱う「ワンピース水着フェチ」の対象は、ファッション性・装飾性を持つ非競技用ワンピース水着である。すなわち、機能性最優先の競技用競泳水着、学校指定のスクール水着とは仕立て・素材・意匠において区別される、夏のリゾート着・プールサイドのファッションアイテムとしてのワンピース水着が中心となる。
歴史
20 世紀初頭、女性用水着は膝下までのワンピース型・スカート付きが標準だった。1907 年にオーストラリアの女性スイマー、アネット・ケラーマン(Annette Kellerman)が米国マサチューセッツ州の海岸で身体に密着したワンピース型水着を着用して逮捕された事件は、近代女性水着史の象徴的事件である。ケラーマン型と呼ばれる密着ワンピース水着はその後、20 世紀前半の女性水着の主流となった。
1930 年代にはホルターネック型・バックレス型(背中が大きく開いた仕立て)のワンピース水着が広まり、1970 年代以降、ハイレグカットが導入され、太腿の付け根まで切り上げた大胆な仕立てが標準化された。2000 年代以降は「モノキニ」(monokini)と呼ばれる側面・腹部に切り抜きを持つ変則ワンピース型、フリル付き・スカート付きワンピース型、ホルターネック型等、多様な派生形態を生んでいる。
ワンピース水着とビキニの対比
ワンピース水着の特異性は、ビキニとの対比のなかで最も明瞭になる。ビキニが布面の縮小と紐の脆弱性によって露出と解体の予感を訴求するのに対し、ワンピース水着は連続した一枚布によって身体を覆いつつ、ハイレグカットの切り込み、背中の開き、胸元のV字、側面の抜き等、限定された箇所のみを集中的に露出させる。
「ビキニより色っぽい」という直観は、覆われている量と露出されている量の対比、すなわち見せている領域より見せていない領域の方が広いことによる、慎ましさの装いと露出意図の同居から生じる。この含み・抑制の美学が、ワンピース水着特有の訴求力を構成する。
ワンピース水着はビキニと異なり、脱がすには上から引き下ろすか下から引き上げるかの一方向動作が必要で、ビキニのように「紐をほどく」即時的脱衣ができない。この物理的な脱衣の制約が、視覚的に「脱がしにくい衣装」という印象を生み、欲望の対象としての強度を高める方向に働く。
嗜好の構造
ハイレグカットの脚部訴求がまず核となる。腰のラインから股下にかけて切り上げられた脚の付け根のラインが、太腿全体を視覚的に長く見せる。布に隔てられているにもかかわらず、ヒップから踵までの脚部全体が一本の連続した線として浮き出す。
背中の開きも独自の訴求点となる。バックレス型・クロスバック型・ホルターネック型のワンピース水着は、背中の上半分または全体を露出させる。前面は覆っているのに背面は大きく開いているという非対称性が、向きを変えるたびに視覚的印象が反転する効果を生む。
胸元の仕立ての多様性も特徴的である。深いV字、浅いV字、ハート型、ビスチェ風、ホルターネック等、胸元の意匠が幅広く設計され、装着者の身体特性とマッチさせる選択幅が大きい。
素材と仕立ての装飾性が最後の要素となる。光沢のあるサテン、ベロア調、メタリック生地、フリル付き、レース付き等、競技用水着には見られない装飾的素材が運用される。これにより、ワンピース水着は機能衣装よりもファッションアイテム・性的アイテムに近い位置づけを持つ。
派生形態
- 標準ハイレグ型:脚を切り上げた基本形
- バックレス型:背中の大きく開いた仕立て
- ホルターネック型:首の後ろで紐を結ぶ型
- モノキニ:側面に大きな切り抜きを持つ型
- フリル付き・スカート付き:装飾性を強めた型
- メタリック・ハイファッション系:素材で訴求する型
- レオタード型水着:バレエ・体操系から派生した変則型
文化的言及
成人向け作品においては、ワンピース水着は「リゾート」「ホテルプール」「夏のセレブ」といった舞台設定と緊密に結びついて運用されてきた。ビキニが大衆的・若年的記号性を持つのに対し、ワンピース水着はやや成熟した・上品な・洗練された女性類型の記号として機能する傾向がある。30 代以上の女優、人妻役、年上の同僚役等の役柄では、ビキニよりもワンピース水着が選択されることが多い。
水着グラビアの世界では、ハイレグ・バックレス型ワンピース水着はビキニと並ぶ標準衣装として、季節を問わず安定した訴求力を持つ。とりわけ黒・濃紺・赤等のソリッドカラーで光沢素材を用いたワンピース水着は、グラビア撮影の定番として長く支持されてきた。
二次元表現では、ワンピース水着はキャラクターの「大人びた一面」「セクシーさを意識した装い」を示す記号として運用されることが多い。普段はツーピース型を着るキャラクターが、特別な場面でワンピース水着を着るという演出は、人格類型の意図的な変化を示す手法として確立している。
関連項目
最終更新
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参考文献
- 『Splash!: A History of Swimwear』 Rizzoli (1990) — 近代水着の発達史
- 『水着の文化史』 光村推古書院 (2003)
- 『Sex and Suits』 Knopf (1994)
- 『ファッション辞典』 文化出版局 (1999)
別名
- one-piece swimsuit
- ワンピ水着
- レオタード水着
- モノキニ