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性的嫌悪症(せいてきけんおしょう、英: Sexual Aversion Disorder, SAD)は、パートナーとの性的接触に対して持続的かつ反復的な嫌悪・不快・恐怖反応を示し、性的状況を積極的に回避する状態である。DSM-IV-TR(2000年)では独立した性機能障害として収載されていたが、DSM-5(2013年)では独立した診断名が削除された。しかし臨床場面では実体として認識され続けており、ICD-11の「性嫌悪(sexual aversion)」として症状記述的に扱われている。

症状と反応パターン

性的場面への嫌悪反応は広範な連続体をなす。軽度では「性行為が楽しくない・したくない」という消極的な回避から、重度では、キス・手をつなぐ・添い寝などの非性的な身体接触に対しても強烈な嫌悪・恐怖・パニック発作・吐き気・解離が生じる。

特定の性的行為(例: オーラルセックスのみ)への嫌悪から、性行為全般・接触全般まで、回避の対象範囲も個人によって異なる。「嫌悪を感じながらも我慢して性交渉に応じている」というパターンも多く、これが慢性的な苦痛・抑うつ・パートナーとの関係破綻につながる。

原因と背景

性的嫌悪症の最も一般的な原因として、性的トラウマ(性被害・性暴力・性的虐待の経験)が挙げられる。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の一症状として性的な刺激への過剰な恐怖反応が生じるメカニズムがある。ただし性的トラウマなしに発症するケースも存在する。

宗教的・文化的な「セックス=罪悪・汚れ」という価値観の内面化が背景にあるケースも少なくない。特に保守的な宗教環境で育ち、婚姻後に突然性行為を求められることへの心理的準備ができていないまま苦痛を経験したという報告が複数の文化圏で記録されている。

身体的原因では外陰痛症膣けいれん・慢性的な性交疼痛が継続することで「性行為=痛み・苦痛」という条件反射的な嫌悪回避パターンが形成されることがある。

不感症との違い

不感症(性的関心・興奮障害)が「性的刺激への反応が乏しい・薄い」状態であるのに対し、性的嫌悪症は「性的刺激に対して積極的に否定的・嫌悪的な反応が生じる」点で異なる。前者は反応の欠如、後者は強力な回避反応の存在が特徴である。臨床では両者が重複する場合も多い。

治療

性的嫌悪症の治療は原因に応じたアプローチが必要で、単一の薬物療法が有効な状態ではない。

トラウマが背景にある場合はトラウマ処理に特化した心理療法(EMDR・長時間暴露療法・トラウマフォーカスドCBT)が基礎となる。トラウマ処理を経ずに性的回避のみを直接狙っても効果が限定的とされる。

段階的系統的脱感作(systematic desensitization)は、性的場面に関連する刺激への嫌悪・恐怖を段階的な暴露によって軽減していく行動療法的アプローチで、性的嫌悪症へも応用される。感覚集中法(sensate focus)との組み合わせも採用される。

パートナーとの関係修復も治療の重要な柱となる。「性行為への拒否」がパートナーに受け入れられない・罪悪感を感じさせられる状況が続くと、関係自体が治療の障壁となるためカップルズセラピーの並行が有効なケースが多い。


関連項目: 不感症 / リビドー / 膣けいれん / 性交疼痛症

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別名

  • 性嫌悪症
  • Sexual Aversion Disorder
  • SAD
  • セックス嫌悪
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