オーガズム障害(おーがずむしょうがい、英: orgasm disorder / anorgasmia)は、性的興奮・刺激が十分であるにもかかわらず、オルガズムに達することが持続的・反復的に困難または不可能な状態の総称である。男女ともに生じうるが、症状の現れ方は異なる。
女性のオーガズム障害(無オルガズム症)
DSM-5では「女性オルガズム障害(Female Orgasmic Disorder)」として独立した診断が設けられており、「適切な性的刺激を受けても著しく遅延・強度低下・オルガズムの欠如が認められ、最低6ヶ月以上持続し、苦痛を引き起こしている」という基準が示されている。
一次性(原発性): 生涯を通じて一度もオルガズムを経験したことがない状態。推定頻度は女性全体の5〜10%とする報告が多い。
二次性(後発性): 以前はオルガズムを経験していたが、現在は得られなくなった状態。薬剤変更・ホルモン変化・関係問題・心理的変化がきっかけになりやすい。
状況性: 自慰では達するがパートナーとの性交では達しない(またはその逆)という状況限定的な場合。これは極めて多くの女性に当てはまるが、苦痛がなければ障害とはみなされない。
成人女性のうち約10〜15%が「オルガズムを経験したことがない」と報告しているとされ(Kinsey et al., 1953年以降の調査)、最も多い性機能障害のひとつといえる。しかし「パートナーとの性交でオルガズムに至らない」という状況は女性の約70%に及ぶという調査もあり、「障害」か「教育・技術の問題」かの境界は曖昧である。
男性のオーガズム障害
男性では射精遅延(delayed ejaculation)・無射精症(anejaculation)として現れる。射精遅延は長時間の性行為でも射精に至らない、または膣内での射精が困難な状態で、「射精不全(dysejaculation)」とも呼ばれる。
男性のオルガズム障害の有病率は1〜4%と低いが、実態より少なく報告されているとも言われる。原因としてSSRI・抗精神病薬による薬剤性が多く、特にSSRIの性機能副作用の中では射精遅延・射精不能が最も頻繁に報告される。その他に脊髄損傷・糖尿病性神経障害・前立腺手術後などの神経学的要因、強い心理的抑制も関与する。
主要な原因
薬剤性: SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)はオルガズム障害の最多の薬剤性原因。セロトニンがドーパミンと拮抗してオルガズム閾値を引き上げるとされる。SNRI・三環系抗うつ薬・抗精神病薬・降圧薬(β遮断薬)も関与しうる。
心理的要因: パフォーマンス不安、宗教・文化的禁忌(「感じてはいけない」)、過去の性的トラウマ、パートナーとの関係不全、「観察者的自己」(spectating: 自分の反応を頭の中で採点・監視している状態)がオルガズムを妨げる。
ホルモン・神経学的要因: テストステロン・エストロゲンの低下、多発性硬化症・糖尿病・脊髄損傷による神経障害、骨盤臓器手術後の神経損傷。
治療と対処
薬剤性の場合は処方変更(ブプロピオン等、オルガズム機能に影響が少ないとされる薬剤への切り替え)が優先される。心理的要因が主体の場合は認知行動療法・マインドフルネス・指示的自慰法(directed masturbation)などが有効とされる。指示的自慰法は、セラピストの指導のもと自分の性的反応を独力で探索・学習し、その後パートナーとの性行為に応用していく手法で、一次性無オルガズム症への有効性が多くの研究で確認されている。
最終更新
別名
- オルガズム障害
- anorgasmia
- orgasm disorder